KADOKAWA Technology Review
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持続可能エネルギー Better Lithium Batteries to Get a Test Flight

大きさ半分、寿命は2倍
リチウム金属電池は来るか?

従来品より2倍長持ちするバッテリーは、事業として軌道に乗るのか? by Richard Martin2016.08.24

リチウム金属電池が、エネルギー密度と経済性を兼ね備えていることは科学者にとっては数十年前から常識だった。だが、残念なのは、リチウム金属電池には再充電しにくく、急に発火しやすいという問題があるのだ。

スタートアップ企業ソリッドエナジー・システム(本社ボストン)は、2012年、マサチューセッツ工科大学(MIT)のドナルド・サドウェイ教授の研究室から独立して別会社になり、今までにない陽極構造とハイブリッド電解質で、問題を解決したという。ソリッドエナジーの創業者胡启超(キチャオ・フー)CEOは、iPhone 6の電池の半分の大きさで、しかも1回の充電でより長持ちする試作品を初めて発表した。ソリッドエナジーは、来年上半期にスマートフォンの電池を販売し、2018年に電気自動車の電池を販売するというが、最初に進出するのは特別な市場、ドローン向け電池だ。

胡CEOが狙っているのは、高高度を飛行するドローンと気球(非都市部でWi-Fiを提供するために開発が進んでいる)だ。

「ドローンと気球は電池で動作しますが、現在のリチウムイオン電池の寿命は非常に短く、重たい問題があります。ソリッドエナジーの新電池は、半分の容積と重量で、同じ性能があります」

Last fall SolidEnergy showed a prototype that's half the size of an iPhone 6 battery but offers more battery life per charge.
昨秋、ソリッドエナジーはiPhone 6の電池の半分の大きさで、1回の充電でより長く持つ電池の試作品を発表した

ドローンメーカー向けの電池の販売は、新たな電池製造企業の参入先として、賢明な手段かもしれない。多くの新参入の企業は、パナソニック(電気自動車メーカー、テスラに電池を納入する数十億ドルの契約がある)のような名声が確立した電池製造企業とは競合しにくい。しかしソリッドエナジーが新規のテクノロジーを採用しているとしても、携帯電話や電気自動車ではなく、拡大するドローン市場でどれだけのシェアを獲得すれば企業として必要な規模になるのかは不明だ。

リチウムイオン電池(携帯電話や電気自動車で現在主流の方式)は、陰極にリチウム酸化化合物、陽極に非リチウム物質(通常は炭素)を使う。一方でリチウム金属電池は、陽極に金属リチウムを使う。金属リチウム電池は、エネルギー密度を高くできることはわかっていたが、電圧が不安定なのが問題とされていた。

ソリッドエナジーの製品は、リチウム金属電池の陽極として、一般的な炭素ではなく、薄く、高エネルギーなリチウム金属箔を使う。ただし、ソリッドエナジーのイノベーションの中心は電解質だ。陽極には「コケ状」になったり、短路(ショート)の原因になるでこぼこ状態になったりしやすい性質がある。胡CEOは陽極を薄くて堅いハイブリッド電解質で覆うことで、リチウム金属が不安定な電解質と、陰極の液体電解質に反応するのを防ぐことで、この性質の影響を削減した。また、陰極の液体電解質により、低温でも電池性能が下がりにくくできる。

だが、ソリッドエナジーのテクノロジーの有効性は現時点で判断できない。胡CEOは、科学論文誌に自身の研究を発表していないのだ。また、ソリッドエナジーは多くの有望な電池製造のスタートアップを頓挫させた難題に直面している。テクノロジーをどのように販売するのか決まっていないのだ。

胡CEOは、電池製造のスタートアップA123の破産申請時にソリッドエナジーを設立した。「私たちには、電池の製造設備も、資金も、研究所もありませんでした」と胡CEOはいう。マサチューセッツ州ウォルサムのA123研究所への訪問は、思いも寄らない成果をもたらした。設立直後のソリッドエナジーがA123の製造ラインを使えることになったのだ。「A123には電池を製造する素晴らしい設備があり、私に電池の基本的な製造方法を教えてくれました」と胡CEOはいう。2013年、A123が中国のコングロマリット万向集団公司に買収された時、胡CEOは施設を使い続ける協定に署名した。協定は今秋期限を迎えるため、ソリッドエナジーはウーバン(マサチューセッツ州の都市)のもっと広い地区に移転することになっている。

A123の設備を使ったので、ソリッドエナジーは通常のリチウムイオンの生産設備で試作装置を開発せざるを得なかった、と胡CEOはいう。

「もしソリッドエナジーの研究所を作っていれば、私たちは素材に集中していたでしょう。そうなると、基本的には、素材を中心に全ての製造工程を設計していたはずです。これは、電池メーカーにとって最大の問題なのです。電池メーカーは素晴らしい性質を持つ素材を起点にして製造工程を設計するので、その後拡張できなくなってしまいます。ソリッドエナジーは逆でした。私たちは大規模な製造ラインを利用できるような素材を開発せざるを得なかったのです」

ただし、胡CEOの野心的な計画には異論もある。「2015年10月の実用レベルの試作品、2017年上期に消費者向け電池、2018年に電気自動車に進出、というのは信じられないくらい強引なスケジュールです」と電池メーカー・サフトのジム・マクドウォール事業開発担当役員はメールで回答した。

ラックス・リサーチの新たな報告書によれば、新しいエネルギー貯蔵技術は、市場に登場するまでに6年間以上の時間と約10億ドルのコストがかかる。ソリッドエナジーは現在まで2度の資金調達で18億ドルを集めている。

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