KADOKAWA Technology Review
×
抗生物質が効かない耐性菌
AI活用でファージに脚光
Adaptive Phage Therapeutics
カバーストーリー Insider Online限定
Faced with failing antibiotics, scientists are using killer viruses to fight superbugs

抗生物質が効かない耐性菌
AI活用でファージに脚光

抗生物質が効かない耐性菌の感染症に対して、その耐性菌に合ったファージを注射することで治療する手法が現実味を増している。DNAシーケンシングとAIによって適切なファージの選択がはるかに容易になったことから、実用化へ向けてスタートアップ企業が研究を進めている。 by Emily Mullin2018.02.05

制御不能な細菌感染によって死の危険に直面している患者に、新たな味方が現れるかもしれない。細菌に感染し、死に至らしめるウイルスである「ファージ」だ。DNAシーケンシングと人工知能(AI)の発達によって、スタートアップ企業数社が細菌の天敵であるこれらのウイルスを抗生物質の代わりに使用できるように研究を進めている。

抗生物質などの薬剤に対する耐性の高い細菌(耐性菌)が広がるにつれて、新しい代用品が切実に求められている。米国では毎年、約200万人が耐性菌に感染し、そのうち2万3000人が亡くなっている。

ファージは種類ごとに特定の種類の細菌に感染するため、ファージに対して耐性が強まる可能性は低い。ファージを利用して細菌感染と戦おうという考えは昔からあった。しかし、最近になるまで適切な種類のファージを選び出すのは当て推量でしかなかった。そのため、医者が患者にファージを注射しても、効果があることもあれば、ないこともあった。

よって現在は、ファージによる治療は感染症の症状が非常に重い場合にのみ最終手段として行なわれる。だが、DNAシーケンシングとAIによって、適切なファージの選択がはるかに容易になったことから、ファージによる治療が実用的な手段になりつつある。

「ファージを迅速にシーケンシングすることで …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI reasoning models can cheat to win chess games 最新AIモデル、勝つためなら手段選ばず チェス対局で明らかに
  2. This artificial leaf makes hydrocarbons out of carbon dioxide 人工光合成が次段階へ、新型人工葉が炭化水素合成に成功
  3. Everyone in AI is talking about Manus. We put it to the test. ディープシークの衝撃再び? 話題の中国製AIエージェントを試してみた
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る