KADOKAWA Technology Review
×
AIを欺く攻撃に備えよ——グーグルのグッドフェロー博士
To protect artificial intelligence from attacks, show it fake data

AIを欺く攻撃に備えよ——グーグルのグッドフェロー博士

「EmTechデジタル」でイアン・グッドフェロー博士は、機械学習システムを誤認識させるような細工をしたデータを用いた攻撃の可能性を指摘し、こうした攻撃を見抜くために同博士の考案した「競争式生成ネットワーク(GANs)」は有効であると語った。 by Jackie Snow2018.03.29

人工知能(AI)システムは、実際にはそこにないものを見てしまうことがある。以前にグーグルのソフトウェアが、3Dプリントの亀をライフルと「認識」してしまったことがある。安全性が重要なシステムにAI技術が幅広く導入されるためには、こうした誤認識を防ぐための手段が不可欠になる。たとえば、自動運転車に使用されるコンピューター・ビジョン・ソフトウェアでは、誤認識は事故に直結しかねない。

3月27日にサンフランシスコで開催されたMITテクノロジーレビュー主催の年次カンファレンス「EmTechデジタル」で、グーグル・ブレイン(Google Brain)の研究者イアン・グッドフェロー博士は、こうした誤認識からAIシステムをどのようにして守るのかについて語った。

グッドフェロー博士は「競争式生成ネットワーク(GANs)」を考案した人物として有名だ。GANsはAI技術の1つであり、同じデータセットで訓練した2つのネットワークを使う。生成モデル(generator)と呼ばれる一方のネットワークは合成データを作成する。通常は画像を作成する。その一方で、識別モデル(discriminator)と呼ばれるもう一方のネットワークは、生成モデルが作った画像が本物かどうかを判断する。グッドフェロー博士はさまざまな研究者たちがGANsを使ってどのような研究をしているのか、およそ1ダースの事例を丹念に調べた。そして、現在もっとも興味を抱いている研究対象に焦点をあてた。それは、機械学習システムがそもそも間違いを犯さないようにすることだ。グッドフェロー博士は、オペレーティング・システムなどの従来のテクノロジーでは防御機能は後に追加されたが、機械学習で同じ轍を踏みたくなかったという。

「AIが多くのことに使われるようになる前に、できる限り安全なものにしたいのです」。

GANs はリアルな「敵対事例(システムを誤認識させるように細工した事例:adversarial example)」を作るのを得意とする。このことは結局は、AIシステムを訓練して堅牢な防御機能を持たせるために非常に良い方法なのだ。システムが見抜かなければならない敵対事例を使って訓練されれば、敵対事例による攻撃を、よりうまく見抜けるようになる。敵対事例が優れたものであればあるほど、防御機能はより強固になる。

グッドフェロー博士は、こうした懸念は今のところ理論上のものであり、敵対事例がコンピューター・ビジョン・システムを欺くのに使われた事例はまだ聞いたことがないと述べている。しかし、ボットやスパム発信者などは、同様の手法を使って合法的なトラフィックに見せかけることで目的を達成しようとしている。

幸運なことに、AIを利用する攻撃からシステムを防御するための準備の時間はまだあるとグッドフェロー博士はいう。

「機械学習は現時点では、攻撃に利用できるほど優れてはいません」。

人気の記事ランキング
  1. China’s heat wave is creating havoc for electric vehicle drivers 中国猛暑でEVオーナーが悲鳴、電力不足でスタンドに長蛇の列
  2. Decarbonization is Japan’s last chance to raise its power 大場紀章「脱炭素化は日本の力を底上げする最後のチャンス」
  3. Brain stimulation can improve the memory of older people 脳への「優しい刺激」で高齢者の記憶力が向上、1カ月持続か
  4. Kyoto University startup pioneers the era of fusion power generation 京大スタートアップが拓く、核融合発電の時代
  5. How do strong muscles keep your brain healthy? 高齢者に運動なぜ必要? 筋肉が脳を健康に保つ仕組み
jackie.snow [Jackie Snow]米国版
現在編集中です。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. China’s heat wave is creating havoc for electric vehicle drivers 中国猛暑でEVオーナーが悲鳴、電力不足でスタンドに長蛇の列
  2. Decarbonization is Japan’s last chance to raise its power 大場紀章「脱炭素化は日本の力を底上げする最後のチャンス」
  3. Brain stimulation can improve the memory of older people 脳への「優しい刺激」で高齢者の記憶力が向上、1カ月持続か
  4. Kyoto University startup pioneers the era of fusion power generation 京大スタートアップが拓く、核融合発電の時代
  5. How do strong muscles keep your brain healthy? 高齢者に運動なぜ必要? 筋肉が脳を健康に保つ仕組み
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8脱炭素イノベーション

2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)の実現に向けて、世界各国で研究開発が加速する脱炭素技術、社会実装が進む気候変動の緩和・適応策などGX(グリーン・トランスフォーメーション)の最新動向を丸ごと1冊取り上げる。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る