医学生物学

Startup’s Artificial DNA Could Revolutionize Drug Design バイオ系スタートアップ
人工タンパク質で創薬目指す

自然界にはない方法でタンパク質を作り、効果の高い創薬を狙うスタートアップ by Ryan Cross2016.09.07

デオキシリボ核酸(DNA)の4つの文字は、あらゆる生命で使われる普遍的なコードを表現している。というか、これまではそうだった。シンスロックス(本社カリフォルニア州ラホヤ)は、バイオテクノロジーのスタートアップで、自然界で使われているA、T、G、Cに人工のXとYを加えた合計6文字の拡張遺伝子アルファベットを持つ微生物を設計している。

自然界には存在しない人工バクテリアを使って、シンスロックスは新しいタンパク質を設計しており、新型の鎮痛剤や抗生物質、がんを標的にした化合物の基礎原料を作ろうとしているのだ。

シンスロックスの事業は、化学者で創業者のフロイド・ロムスバーグ取締役(科学的創業者)がサンディエゴにあるスクリプス研究所でしていた研究に基づいている。ロムスバーグ取締役は15年以上にわたる研究により、一対の人工DNA文字を完成させた。人工DNAは遺伝子の生命メカニズムの中で機能し、既存の文字と誤認されるほどには類似していない。ロムスバーグ取締役の研究室がXとYを作り出したと発表したのが2012年。2014年には、バクテリアの細胞が複製され、XとYを含む遺伝子を次世代に伝えられることをロムスバーグが示した。

By adding the DNA letters X and Y, cells can make proteins with up to 172 different amino acids—compared to nature’s set of 20.

DNAにXとYの文字を追加すれば、細胞は、172種類のアミノ酸(自然界では20種類のアミノ酸が使われている)からタンパク質を作れる

「生命は複雑で、生命を模倣するのはとても難しいのではないか、と考えられていましたが、実際には、生命に使われる分子は全く特別待遇されていないのです」(ロムスバーグ取締役)

2年前に、XとYを実用目的で使う人はいなかった。だがロムスバーグ取締役の目標は、従来の化学では複雑すぎて作れないような医薬品を創り出すことだった。「医薬品までは私の研究室では作れません。そこで、このことに専念する会社を興すのも、実現への道でした」(ロムスバーグ取締役)ということで、シンスロックスが生まれたのだ。

XとYを作ったことそのものも科学的には画期的な出来事だが、シンスロックスの真の成果は、6文字で新しいタンパク質を作ったことだ。自然界では、4文字のDNAを3組(「コドン」という)使って、特定のアミノ酸を表す。43は64だが、開始コドンのATG、終了コドンのTAA、TAG、TGGを除外すると60、さらに3文字目が違っても生成されるアミノ酸が同じ場合があり、天然のアミノ酸は20種類しか作れない。一方、DNA文字にXとYを加えると、細胞は最大172種類のアミノ酸からタンパク質を作れるようになる。

「アミノ酸の多くは(遺伝子コードの組み合わせからから見ると)かなり重複しています。職業として医薬品を作り続ける医化学者にとって、これは極めて重大な制約に見えるはずです」とロムスバーグはいう。人工アミノ酸を使えば、科学者は既存のタンパク質をより強く標的に結びつけられるため、より効果の高い医薬品が作れる。別の考えでは、特定の標的にだけ結びつくタンパク質を設計し、非常によく似た標的を避ければ、危険な副作用を心配せずに済む。シンスロックスで進行中のプロジェクトには、クモの毒素を非オピオイド系(アヘン、モルヒネ様物質)で、しかも依存性のない鎮痛剤に作り変えることを目指すものもある。

代謝異常を治療する新しい抗生物質や医薬品も計画されている。「インスリンは格好の目標です。すでに大腸菌で生産されていますが、毎日注射する必要があります」とシンスロックスのコート・ターナーCEOはいう。的確な人工アミノ酸をインスリン分子に導入すれば、効果が長く持続するインスリンを作れる可能性があり、糖尿病患者は2、3日から1週間に一度注射するだけで済むようになるだろう。

科学的には、このテクノロジーがうまくいけば、まさに画期的なことになることは信じられている。だが、現在、拡張遺伝子アルファベットを応用し、さまざまな非天然型アミノ酸でタンパク質を作ることについて、機運が広がる見込みはない。ワシントン大学のマーク・ラジョイ研究員(合成生物学)は「本当は想像力の問題に過ぎません。率直にいえば、非天然型アミノ酸をひとつでも使うことを考えることさえ、頭がおかしいと思う人もいるのです」

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ライアン クロス [Ryan Cross]米国版 ゲスト寄稿者
パデュー大学で神経科学と遺伝学を学び、ボストン大学の科学ジャーナリズムプログラムを卒業したジャーナリスト。コーヒーを飲むことと遺伝子編集の話も大好きですが、最新の科学トレンドや発見を解きほぐし、分かりやすく調合するのも得意です。
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