科学者は陰謀論、疑似科学と
どう闘うべきか?
ハーバード大教授に聞く
地球工学の実験を実世界で実施する計画を発表したハーバード大学のデビッド・キース教授のもとに、ケムトレイル説を信じる人々から多くの脅迫メールが届き、研究に支障をきたしているという。MITテクノロジーレビューがキース教授に、陰謀論を信じる人たちに、科学者としてどのように対応すべきかを聞いた。 by James Temple2018.08.02
今年の春、ハーバード大学の気象学者であるデビッド・キース教授は、同僚とともに小規模な地球工学の実験を実世界で実施する計画を発表した(「人工的な気候制御で、地球温暖化を緩和できる? 副作用は?」を参照)。
2人が研究している「太陽光地球工学(solar geoengineering)」と呼ばれるテクノロジーの基本概念は、成層圏で特定の粒子を散布した場合に、世界温暖化をいくらか緩和する程度に熱を宇宙空間へ戻せるかどうかを確かめるというものだ。しかし、研究室内の実験から大気圏内での実験への移行が物議を醸している。
数ある懸念の中でも特に、世界全体の気候系をいじくるという考えは危険過ぎるとの批判が寄せられている。だが、この分野におけるキース教授の研究は特に、「ケムトレイル」にまつわる陰謀論にも巻き込まれた格好だ。ケムトレイル説を信じる人々は、航空機がつくり出す飛行機雲が、軍もしくは何者かが大規模な気象改変やマインドコントロールなどのよこしまな目的をもって、すでに化学物質を空中に散布している証拠だと主張している。
キース教授の計画は実際には穏当なものだ。地表面から約20キロメートルの高高度気球から、硫酸塩や炭酸カルシウムといった粒子を1キログラム以下の量だけ散布する。それらの粒子が成層圏の化学的性質をどう変えるかを調べれば、科学者はコンピューター・モデルを改良し、大規模な地球工学の影響をより正確に予測できるようになる。
キース教授の話では、システム評価のための初期飛翔を2019年春に始める予定で、実際の実験は秋にも開始するという。いくつかの気球メーカーと交渉中で、その結果により最終的な実験の場所が決まる。教授らはまた、独立諮問委員会の設立も進めている。同委員会は提案内容を確認し、環境へのリスクの可能性や利害関係者の関与の必要性などについて大学や研究チームにフィードバックする。
ケムトレイル説は誤りであることが何度も証明されているにもかかわらず、驚くほど広がりを見せている。ネイチャー誌に掲載されたある研究によれば、最大40%の米国人がそのような説を「完全に」または「いくらかは」真実だと考えているという。そうした「陰謀論的な見方」は、ソーシャル・メディアの地球工学に関するやり取りの60%を占めている。キース教授も自身の研究内容のために、憎しみの込もったメッセージを定期的に受け取っており、身体的な危害を加えるという脅しまであるという。
MITテクノロジーレビューのインタビューにおいてキース教授は、誤解が広く行き渡ることで自身の研究が問題に巻き込まれ、地球工学に関する公の議論にも影響が出ていると語っている。
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——ここ数カ月間、フェミニズムに関する著作『美の陰謀 女たちの見えない敵」(1994年、阪急コミュニケーションズ刊)があり、進歩的な政治アドバイザーでもあるナオミ・ウルフが、ケムトレイル説とあなたの実験計画のずさんさについてツイッター上で意見表明をしています。あなたの同僚の1人が述べたように、自閉症の原因がワクチンであると主張したジェニー・マッカーシーのときのような状況が、 …
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