大都市を「水没」から守れ、ニューヨーク市が挑む果てしない課題
7年前の暴風雨で大きな洪水災害を受けたニューヨーク市では、気候変動への備えが進んでいる。だが、「回復力(レジリエンス)」を高める大都市の取り組みは、まだまだ始まったばかりだ。 by Courtney Humphries2019.06.11
ニューヨーク市クイーンズ区のロングアイランドにあるハンターズ・ポイント南ウォーターフロント公園は、数年前まで工業用埋め立てごみ処理地だった。現在は、かつてイースト川沿いにあった湿地が現代的に生まれ変わったエリアになっている。草で覆われた土手の上には水辺に沿ってジグザグに進むジョギング・コースがあり、潮の満ち引きで海水が出入りする草が生い茂った湿地エリアもある。
2017年に完成したこの公園は、洪水を防ぐインフラでもある。湿地帯は嵐や海面上昇による洪水を緩和するように設計されており、丘や土手、コンクリート壁は洪水を防いだり、水の流れ変えたりして近隣地域を守る。
7年近く前、巨大暴風雨「サンディ(Sandy)」で増水した川が、ロングアイランドの都市部に洪水被害を及ぼし、道路の冠水、車や地下室への浸水被害を引き起こした(ニューヨーク市全域で40人以上の死者も出した)。だが、この災害で人々が水辺から離れることはなかった。
気候温暖化が進むいま、ニューヨーク市は市の大半、とりわけ長さ837キロメートルの海岸沿いの都市構造を見直す必要がある。「気が遠くなるような規模です」。都市計画者であり、独立非営利組織「地域計画協会(RPA:Regional Plan Association)」のデータ・リサーチ部長であるエリス・カルヴィンは、水辺にたたずみながらこう話す。
ニューヨーク市気候変動パネル(NPCC)の推定によると、今世紀中頃までにニューヨーク市の気温は平均で2~3°C高くなり、ひと夏に複数回熱波が襲来するようになる。海面は2050年代までに28~53センチメートル、2100年までに最大1.8メートル上昇し、年間1%の確率で浸水が発生する地域「100年浸水地帯(100-year-flood zone)」の面積とそこに住む人の数が倍になる可能性がある。このような影響を受ける土地がもっとも多いのがクイーンズ区だ。
ニューヨーク州は、気候変動への適応計画において他の多くの沿岸都市より進んでいる。だが、RPAによると、 …
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