KADOKAWA Technology Review
×
Innovators Under 35 Japan 2026 候補者募集開始!
制裁企業も貢献多数、OSSの知られざるリスクを探るプロジェクト
Ms Tech
コンピューティング 無料会員限定
The US military wants to understand the most important software on Earth

制裁企業も貢献多数、OSSの知られざるリスクを探るプロジェクト

世界中のコンピューターで使われているリナックス・カーネルなどのオープンソース・ソフトの信頼性を高めるプロジェクトを米国国防高等研究計画局(DARPA)が開始する。OSSのリスクを把握し、破壊を防ぐことが目的だ。 by Patrick Howell O'Neill2022.07.19

世界はすべてリナックス(Linux)カーネルの上に構築されている——。そう言っても過言ではない。だが、多くの人はリナックス・カーネルの名前すら聞いたことがない。

リナックス・カーネルは、多くのコンピューターにおいて電源を入れると最初に読み込まれるプログラムの1つである。リナックス・カーネルによって、コンピューターのハードウェアはソフトウェアと対話できるようになり、リソースの使用を制御し、オペレーティング・システム(OS)の基盤として機能する。

リナックス・カーネルは、ほぼすべてのクラウド・コンピューティング、事実上すべてのスーパーコンピューター、IoT機器、数十億台ものスマートフォンなどの中核をなす構成要素だ。

だが、リナックス・カーネルはオープンソース・ソフトウェアであるため、誰でもコードを書いたり読んだり使ったりできる。米軍内部のサイバーセキュリティの専門家が深刻に懸念しているのは、この点だ。オープンソースであるということはすなわち、他の重要なオープンソース・ソフトウェアと同じように、まだほどんと知られていないような方法で悪意ある操作をされるリスクにさらされているということなのだ。

サイバーセキュリティ研究者であり、米国国家情報局(National Security Agency:NSA)の元コンピューター・セキュリテイ科学者であるデイヴ・アイテルは、「人々は今や、私たちがすることは文字通りすべて、リナックスによって支えられているのだと気づいています」と言う。「リナックスは社会の中核をなすテクノロジーです。カーネルのセキュリティを理解していないということは、最重要社会インフラのセキュリティを確保できないということです」。

米軍の研究部門である米国国防高等研究計画局(DARPA)は現在、自らが直面しているリスクを把握するために、こうしたオープンソース・プロジェクトが取り扱っているコードとコミュニティの衝突を理解したいと考えている。目標は、手遅れになる前に、悪意ある行為者を効率的に認識し、極めて重要なオープンソースコードが破壊されるのを防ぐことだ。

DARPAの「ソーシャルサイバー(SocialCyber)」プログラムは、社会学と、最近の人工知能(AI)の技術的進歩を組み合わせた、18カ月にわたる数百万ドル規模のプロジェクトである。大規模なオープンソース・コミュニティと、そこで作り出されるコードとのマッピング、理解、保護を目的としている。このプロジェクトは、オープンソース・ソフトウェアのコードと社会的側面の両方の自動分析を組み合わせたものであり、これまでにほとんどなかった研究だ。

プロジェクトを支えるDARPAのプログラム・マネージャーであるセルゲイ・ブラタスは、「オープンソースのエコシステムは、人類史上もっとも壮大な事業の1つです」と言う。

「愛好家の活動だったものが、今では、世界中のインフラ、インターネット自体、重要産業、基幹システムの基礎を形成するグローバルな取り組みに発展しています。産業、電力網、海運、運輸を動かしているシステムなのです」。

オープンソースへの脅威

現代文明の多くは、拡大し続けるオープンソース・コードの集合体に依存している。オープンソース・コードがコストを削減し、人材を惹き付け、多くの作業を容易にしてくれるからだ。

しかし一方で、アイテルのような専門家は、オープンソ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. It’s time to address the looming crisis in entry-level work. 「コーディングを学べ」もう通用せず、AIが若者の雇用を奪い始めた
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2026 「Innovators Under 35 Japan」2026年度候補者募集のお知らせ
  3. Anthropic’s Code with Claude showed off coding’s future—whether you like it or not 「Claudeに任せてしまおう」 たった1年で激変したソフトウェア開発
▼Promotion
社会実装都市「ひろしま」の魅力に迫る ローカル ✕ イノベーション
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る