「プラグを抜け!」ロンドン最大のアンチAIデモを歩いた
2月末の土曜日、数百人の抗議者がオープンAI、メタ、グーグル・ディープマインドの英国本社が集まるロンドン・キングス・クロスを行進した。この行進を組織した活動家たちの話を聞くために、現地に向かった。 by Will Douglas Heaven2026.03.05
- この記事の3つのポイント
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- ロンドンで数百人規模のアンチAI抗議が発生し、失業から人類絶滅まで幅広い懸念が表明された
- 抗議組織者らはAI技術の制御不能性を危惧し、企業の人材確保阻害や政府規制推進を狙っている
- 参加者の動機は多様で抗議の雰囲気は穏やかだが、具体的解決策や統一見解は見えていない
プラグを抜け! プラグを抜け! スロップを止めろ! スロップを止めろ!
2月28日(土)の数時間、私は数百人のアンチ人工知能(AI)抗議者がロンドンのキングス・クロスの技術拠点を行進する様子を見ていた。この地区はオープンAI(OpenAI)、メタ(Meta)、グーグル・ディープマインド(Google DeepMind)の英国本社がある場所だ。抗議者たちはスローガンを叫び、看板を振っていた。この行進は2つの別々の活動家グループである「ポーズAI(Pause AI)」と「プル・ザ・プラグ(Pull the Plug)」によって組織され、この種の抗議としては最大規模だと宣伝されていた。
提示された懸念は、オンラインスロップや虐待的画像から殺人ロボット、人類絶滅まで、あらゆる範囲を網羅していた。ある女性は頭に、「誰が誰の道具(TOOL)になるのか?」と書いた大きな手作りの看板を着けていた(「TOOL」のOの部分は目の穴として切り抜かれていた)。「原因が生じる前に一時停止を」や「絶滅=悪」、グーグル・ディープマインドのデミス・ハサビスCEO(最高経営責任者)を指して「デミス・ザ・メナス」と書いた看板もあった。別の看板には単純に「AIの使用を止めろ」と書かれていた。
「AI? 私の死体を越えてからだ」と書かれたサンドイッチボードを着けた年配の男性は、AIが社会に与える負の影響を懸念していると私に語った。「失業の危険性についてです。悪魔は怠惰な人間に仕事を与えます(日本版注:「小人閑居して不善を為す」の意)」。
これらはすべて馴染みのある話である。研究者たちは長い間、生成AIが引き起こす実際の害と仮説的な害の両方を指摘してきた。特にオープンAIのChatGPT(チャットGPT)やグーグル・ディープマインドのGemini(ジェミニ)などのモデルについてだ。変わったのは、これらの懸念が現在、大勢の人々を街頭に集めて叫ばせることができる抗議運動によって取り上げられていることである。
私がアンチAIの抗議者に初めて遭遇したのは2023年5月、オープンAIのサム・アルトマンCEOが講演していたロンドンの講堂の外だった。2、3人が数百人の聴衆に向かってヤジを飛ばしていた。2023年に設立され個人寄付者によって資金提供されている、小規模だが国際的な組織であるポーズAIは2025年6月に、グーグル・ディープマインドのロンドンオフィス外での抗議に数十人の群衆を集めた。今回の行進は、大幅な拡大のように感じられた。
「人々にポーズ AIの存在を知ってもらいたいのです」と、英国支部を率い、2月28日の行進を共同組織したジョセフ・ミラーは、抗議の前日の電話で私に語った。「私たちは非常に急速に成長しています。実際、AI自体の進歩に匹敵する、やや指数関数的な軌道にあるようです」。
ミラーはオックスフォード大学の博士課程生で、機械論的解釈可能性を研究している。これは、大規模言語モデル(LLM)がタスクを実行する際に内部で何が起こっているかを正確に理解しようとする新しい研究分野である。ミラーは研究により、この技術は永遠に私たちの制御を超える可能性があり、破滅的な結果をもたらす可能性があると信じるようになった。
暴走する超知能である必要はないと彼は言った。誰かがAIに核兵器の管理を任せるだけで十分だ。「人類が愚かな決定を下せば下すほど、事態が悪化する前にAIが持つべき力は小さくて済みます」とミラーは言った。
米国政府がアンソロピック(Anthropic)に対し、「合法的な」軍事目的でLLMのClaude(クロード)を使わせるように強制しようとした後では、そのような恐れは少し現実味を帯びて見える。アンソロピックは立場を堅持したが、オープンAIは代わりに米国防総省と契約を結んだ(オープンAIは2月28日の抗議についてのコメント要請を辞退した)。
ポーズAIのメンバーで抗議の共同組織者であるマチルダ・ダ・ルイにとって、AIは人類が直面する最後の問題である。ルイは、この技術によって私たちが抱える他のすべての問題を一度に永久に解決できるか、それとも私たちを一掃して問題を抱える人が誰もいなくなるかのどちらかだと考えている。「もし人々が本当に問題を理解していたら、現実的には、他のことに焦点を当てていられないでしょう」。
しかし、その緊急性にもかかわらず、行進の雰囲気は心地よく、楽しくさえあった。怒りの感覚はなく、生命、ましてや人類という種の生存が危険にさらされているという感覚もほとんどなかった。それは抗議者たちが持ち込んだ幅広い関心と要求によるものかもしれない。
私が出会った化学研究者は、陰謀論に近いもの(データセンターが人間の聴覚閾値以下の超低周波音を放出し、近くに住む人々に偏執症を誘発する)から合理的なもの(ネット上でのAIスロップの拡散により、信頼できる学術資料を見つけることが困難になっている)まで、一連の苦情を列挙した。この研究者の解決策は、企業がこの技術から利益を得ることを違法にすることだった。「AIからお金を稼げなければ、そんなに問題にはならないでしょう」。
私が話をした大部分の人々は、テック企業がおそらくこの種の抗議に注意を払わないだろうということに同意していた。「企業への圧力が効果を発揮することはないと思います」と、行進で偶然出会ったポーズAIのグローバル責任者マキシム・フルネスは私に語った。「テック企業の人たちはこの問題を気にしないように最適化されています」。
しかし、ポーズAIに参加する前に12年間AI業界で働いていたフルネスは、これらの企業にとって事態を困難にできると考えている。「内部告発者の保護をしたり、AIで働くことがセクシーな仕事ではなく、実際にはひどい仕事だということを公衆に示すことで、競争を遅らせることができます。人材パイプラインを枯渇させられるのです」。
一般的に、ほとんどの抗議者は可能な限り多くの人々に問題を認識してもらい、その宣伝効果を使って政府の規制を推進することを望んでいた。主催者たちは行進を社会的イベントとして宣伝し、この大義に興味を持つ人なら誰でも参加するよう奨励していた。
それは効果があったようだ。私は金融業界で働く男性に出会ったが、彼はルームメイトと一緒に参加していた。なぜここにいるのかと尋ねると、「とにかく土曜日にはそれほどやることがない時もありますから」と彼は言った。「議論の論理が見えて、それがある程度理にかなっていると思えば、『ええ、もちろん、一緒に行きます』という感じです」。
彼はAIに関する懸念を提起することは、誰にとっても完全に反対するのが困難だと考えていた。パレスチナ支持の抗議とは違って、大義に反対する人がいるかもしれないが、「アンチAIについては、行進している目的に完全に反対することは非常に難しいと思います」と彼は言った。
キングス・クロスを練り歩いた後、行進はブルームズベリーの教会ホールで終了した。そこにはテーブルと椅子が列に並べられていた。抗議者たちは名前をステッカーに書き、胸に貼り付け、隣の人に気まずい自己紹介をした。抗議者たちは世界を救う方法を見つけるためにここにいた。しかし私は電車に乗らなければならなかったので、そのことを彼らに任せて去った。
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- ウィル・ダグラス・ヘブン [Will Douglas Heaven]米国版 AI担当上級編集者
- AI担当上級編集者として、新研究や新トレンド、その背後にいる人々を取材。前職では、テクノロジーと政治に関するBBCのWebサイト「フューチャー・ナウ(Future Now)」の創刊編集長、ニュー・サイエンティスト(New Scientist)誌のテクノロジー統括編集長を務めた。インペリアル・カレッジ・ロンドンでコンピューターサイエンスの博士号を取得しており、ロボット制御についての知識を持つ。