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「嫉妬」か「正義」か、マスク対アルトマンの訴訟始まる
Stephanie Arnett/MIT Technology Review | Getty Images
Elon Musk and Sam Altman are going to court over OpenAI’s future

「嫉妬」か「正義」か、マスク対アルトマンの訴訟始まる

イーロン・マスクがオープンAIとサム・アルトマンCEOを提訴した裁判が、いよいよ始まる。マスクは「非営利の約束を破られた」と主張し、最大1340億ドルの損害賠償とアルトマンの解任を求める。オープンAI側は「嫉妬に満ちた妨害」と一蹴するが、裁判の結果は8500億ドル評価のIPOを直撃しかねない。 by Michelle Kim2026.04.29

この記事の3つのポイント
  1. イーロン・マスクがサム・アルトマンらを非営利の約束違反を理由に提訴し、最大1340億ドルの損害賠償を求める
  2. 法学者は原告適格や適用法の妥当性に疑問を呈しており、両州司法長官はすでに営利転換を条件付きで承認済み
  3. 判決次第ではオープンAIのIPOが頓挫しかねず、AI業界の勢力図を塗り替える潜在的影響を持つ
summarized by Claude 3

数年にわたる法廷闘争の末、イーロン・マスクとオープンAI(OpenAI)のサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は今週、米北カリフォルニアでの裁判に臨む。この裁判は広範な影響をもたらす可能性がある。オープンAIの待望の新規株式公開(IPO)を前に、裁判所は同社が営利企業として存続することを認めるかどうかを判断し、アルトマンCEOを含む現経営陣の解任に踏み切る可能性すらある。

マスクはオープンAIを提訴し、同社のアルトマンCEOとグレッグ・ブロックマン社長が、人類に利益をもたらすAIの開発に専念する非営利組織として同社を維持すると約束することで、創業初期に資金を提供させるよう自分を欺いたと主張している。その後、同社は営利子会社を運営する形に再編された。マスクは2015年にアルトマンらとともにオープンAIを共同創業したが、激しい権力闘争の末、2018年に離脱した。

マスクはオープンAIとその最大の出資者の1人であるマイクロソフトに対し、最大1340億ドルの損害賠償を求めている。また、アルトマンCEOとブロックマン社長の解任、およびオープンAIの非営利組織への復帰も求めている。損害賠償金については、自身ではなくオープンAIの非営利部門に支払うよう裁判所に求めている。

9人の陪審員が諮問評決(拘束力を持たない勧告)を下し、アルトマンCEOに対するマスクの請求について裁判官の判断を導く。マスク、アルトマンCEO、ブロックマン社長はいずれも証言台に立つ予定だ。オープンAIの元最高科学責任者(CSO)であるイリヤ・サツケバー、元最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ、そしてマイクロソフトのサティア・ナデラCEOも証言する見込み。オープンAIの創業と成長の裏にあった気まずいテキストメッセージ、生々しい日記の記述、そして絶え間ない策謀が明るみに出ると予想される。

秘密主義に包まれたこの業界において、この裁判は、史上最も変革的なテクノロジーを生み出している企業の内幕を一般の人々が垣間見る稀な機会となるだろう。

何をめぐって争っているのか?

オープンAIが当初、マスクからの3800万ドルの寄付を受けて非営利組織として設立された際、同社は財務的なリターンを生み出す必要に縛られることなく、公益のためにオープンソース技術を生み出すと誓った。しかし年月が経つにつれ、同社は、激化する競争によってAIモデルの開発手法を公開することが危険になりかねないこと、また非営利の組織形態ではAI開発を継続するための十分な資金を調達できないと主張し始めた(MITテクノロジーレビューは、オープンAIの使命をめぐる内部対立最初に報じた)。

裁判所はすでに、2017年にアルトマンCEOとブロックマン社長が営利部門の設立を望んでいた一方、マスクは自身が所有する電気自動車会社テスラとオープンAIを合併させることを提案していたと認定している。マスクが資金提供を停止すると脅したとき、アルトマンCEOとブロックマン社長は同社を非営利組織として維持することにコミットしていると伝えた。マスクは、2人が自分に知らせることなく営利転換の計画を進めたと主張している。オープンAIの説明によれば、マスクは同社に営利事業体が必要だという点で同意しており、そのCEOに就任することさえ望んでいたという。

しかし、たとえマスクがアルトマンCEOとブロックマン社長に欺かれたことを証明できたとしても、同社を営利子会社として再編したことを理由に2人を訴える原告適格がそもそもあるかどうかは疑わしい。なぜ裁判官がこの請求を認めたのか、一部の法学者は首をかしげている。「イーロン・マスクが寄付者だったから、あるいはかつて取締役だったからという理由で訴訟を起こせるという考えは、かなり不可解です」。ノースウェスタン大学で非営利法を研究するジル・ホーウィッツ法学教授はこう話す。「通常、慈善目的の履行を求めてそのような請求をするのは司法長官の役割です。そしてそれはすでに実行されています」。

2025年10月、オープンAIの本社所在地である米カリフォルニア州と、設立地であるデラウェア州の司法長官は、一連の条件のもとでオープンAIの新たな企業形態を承認する合意を同社と締結した。例えば、非営利部門の安全・セキュリティ委員会が、営利子会社による安全関連の意思決定を審査することになっている。マスク、AIの安全性を訴える活動家、市民社会団体など、再編に批判的な人々はこれを阻止しようとしてきた。

カリフォルニア州司法長官は、マスクの訴訟が公益にどう資するかが見えないとして、同訴訟への参加を拒否している。

それでも、この合意がオープンAIを非営利の使命に縛り付けるものかどうかは未解決の問題だ。「イーロン・マスクは(中略)、オープンAIと各州司法長官が合意した内容にどのような欠陥があるかを示さなければなりません」と、UCLAロースクールで慈善・非営利プログラムの部長を務めるローズ・チャン・ルイは言う。条件が整っていたとしても、オープンAIにそれを守らせられるかどうかは、「どれだけ強制力を持って執行できるか、そしてオープンAIの業務にどれだけの透明性を確保できるか」にかかっている。

さらに重要なのは、法律の専門家たちが、この訴訟が適切ではない法体系のもとで審理されていると指摘していることだ。マスクは、アルトマンCEOとブロックマン社長がクローズドソースの営利子会社を設立することで、オープンAIの慈善信託に違反したと主張している。その結果、裁判所は信託法に基づいてこの請求を分析してきた。「ですが、オープンAIは信託ではありません。オープンAIは法人です。ですから本来は(中略)慈善非営利団体に関する法律を参照すべきです」とチャン・ルイは言う。

何が賭けられているのか?

法的な不透明さにもかかわらず、裁判の結果はAI競争を根底から覆す可能性がある。マスクが求める救済措置のいずれか1つだけでも、年内の株式公開に向けて突き進むオープンAIを壊滅的な打撃を与えかねない。8500億ドル超の評価額を持つオープンAIは、マスクとの訴訟を事業上の潜在的リスクとして説明している。チャットボット「Grok(グロック)」を開発するマスクの競合企業xAIは、早ければ6月にも彼のロケット企業スペースX(SpaceX)の一部として株式公開する見込みだ。マスクが勝訴すれば、スペースXと合わせて1兆2500億ドルの評価額を持つxAIがAI競争で大きな優位を得る可能性がある。

この裁判は、マスクとかつて彼が創業を助けた企業との間の深い亀裂をも浮き彫りにしている。オープンAIの広報担当者は、MITテクノロジーレビューに対してX上の投稿を参照するよう求めた。そこには「この訴訟は、競合他社を妨害しようとする根拠のない嫉妬に満ちた試みに過ぎません」と書かれている。マスクの弁護士はコメントの求めに即座に応じなかったが、マスク自身はXに「スカム(詐欺師)・アルトマンは息をするように嘘をつく」と投稿している。

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AIジャーナリズムのためのターベル・センター(Tarbell Center for AI Journalism)の支援を受けて執筆している、MITテクノロジーレビューのAI担当記者。これまでに、レスト・オブ・ワールド(Rest of World)で労働とテクノロジーをテーマに取材し、フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)誌では韓国政治について執筆していた。ジャーナリズムに転身する以前は、米カリフォルニア州で企業弁護士として勤務。
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