ポルノもLGBTも遮断、キリスト教徒向けMVNOが米国で登場
キリスト教徒を対象とした携帯電話サービス「ラディアント・モバイル」が5月5日で米国のローンチされる。ポルノコンテンツは成人でも解除不可でブロックされ、LGBTコンテンツもデフォルトでフィルタリングされる。米国の携帯プランでこうした仕組みを採用するのは初めてだという。 by James O'Donnell2026.05.03
- この記事の3つのポイント
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- キリスト教徒向けMVNOが成人でも解除不可のポルノブロック機能を持つ携帯プランを5月に米国で初ローンチする
- T-モバイル回線を活用し、イスラエル企業のフィルタリング技術でLGBT関連コンテンツも原則デフォルトブロックする
- ブロック対象の主観的判断がサービス提供者に集中し、専門家はオープンなインターネットの観点から実効性と妥当性に疑念を示す
キリスト教徒を対象とした新たな全米規模の携帯電話ネットワークが、来週ローンチされる予定だ。このネットワークはポルノ・コンテンツをブロックするが、ネットワーク・セキュリティの専門家によれば、米国の携帯電話プランがネットワーク・レベルでポルノをブロックし、しかも成人のアカウント所有者であっても解除できない仕組みを採用するのは初めてだという。また、ジェンダーやトランスジェンダーに関連するコンテンツをブロックするフィルタリング機能も導入される予定だ。この機能はオプション設定で変更可能ではあるものの、全プランでデフォルトで有効になっている。
このネットワークは、新たに設立された仮想移動体通信事業者(MVNO)のラディアント・モバイル(Radiant Mobile)が運営するサービス。現在、5月5日のローンチに向けてテスト中だ。MVNOは自社で携帯電話の基地局を保有せず、大手通信事業者(今回の場合はT-モバイル=T-Mobile)から回線を購入し、特定の層に向けてサービスを提供する事業者だ(トランプ大統領は昨年、トランプ・モバイル=Trump Mobileという独自のMVNOを発表している。ほかにも、環境保護や人権擁護などの活動へ寄付するクレドモバイル=CREDOMobileなどがある)。
「私たちは(そしてそうする権利が十分にあると考えていますが)、イエス・キリストを中心に据え、ポルノが存在せず、LGBTが存在せず、トランスジェンダーが存在しない環境を作り上げようとしています」。ラディアント・モバイルの創業者、ポール・フィッシャーはMITテクノロジーレビューに語った。T-モバイルの広報担当者は、これらのコンテンツ・ブロックが同社のポリシーに違反するかどうかについてコメントしなかった。声明の中で担当者は、T-モバイルはラディアント・モバイルと直接の取引関係はなく、MVNO支援会社のコンパックスデジタル(CompaxDigital)を通じて連携していると付け加えた。
フィッシャー創業者によれば、このプランを宣伝するためにキリスト教系インフルエンサーを複数採用したほか、全国数千カ所の教会にも働きかけ、会員の月額30ドルのサブスクリプション料金の一部を同社が各教会に寄付する仕組みを提供するという。また、韓国やメキシコなどキリスト教徒の人口が多い他国への展開も視野に入れている。
ラディアントの売り文句の中で、少なくとも1つは聞き覚えのあるものがある。インターネットは有害な汚泥にあふれている、という考え方だ。インターネットは、人々をより悲観的にし、憎悪を生み出し、孤立させるコンテンツやアルゴリズムによって動かされている。これを解決しようとする取り組みは数多くあり、物議を醸している年齢確認法や、ソーシャルメディア企業が若いユーザーを意図的にプラットフォームに依存させたと主張する訴訟の波もその一つだ。
フィッシャー創業者は最終手段を選んだ。ラディアントはイスラエルのサイバーセキュリティ企業、アロット(Allot)と協力し、暴力や自傷に関するコンテンツなど、カテゴリー別にコンテンツをブロックする仕組みを構築している。一部のカテゴリーはデフォルトでブロックされており、成人ユーザーであっても解除はできない。
ポルノもその対象に含まれる。オーランドの牧師で同社の最高執行責任者(COO)に招かれたクリス・クリミスは、自身が同社に加わった理由の1つとして、キリスト教徒がポルノ問題に対して実際に「何か行動できる」手段を提供したかったからだと語る。彼は最近の調査で、牧師の67%がポルノ利用の「個人的な経験」を持つという結果に衝撃を受けた。また、6人の子どもたちが意図せずとも端末でポルノに接触してしまうことを懸念している。
「デジタル空間への扉を閉じる方法を何とか見つけなければなりません。それが私たちの目指していることです」。
このブロック技術は大雑把な手段だ。アロットはWebサイトのドメインを100以上のカテゴリーに分類しており、ポルノのほか、暴力、マルウェア、ゲーム、そしてラディアント・モバイルの場合は「セクト」(サタニズム=悪魔主義に関するWebサイトを含む)も対象となっている。ユーザーがブロックされたカテゴリーに属するWebサイトにアクセスしようとすると、ページは表示されない。これは、「Covenant Eyes(カバナント・アイズ)」のようなアプリベースのコンテンツ・ブロッカーよりも厳格だ。Covenant Eyesはキリスト教徒向けのポルノ禁止アプリで、友人や家族に通知を送り、回避したり削除したりすることが可能だ。
「ネットワーク・レベルでのブロック自体は決して新しいものではありません」。ノースイースタン大学サイバーセキュリティ・プライバシー研究所の所長を務めるデイビッド・チョフネス教授(コンピューターサイエンス)は言う。こうしたブロックは、例えば権威主義的な政府による検閲の根幹をなすものだ。しかし、より無害な形での利用もある。米国の通信事業者はマルウェアを拡散していることが判明している特定のドメインをブロックしており、子どものスマートフォンでアダルト・コンテンツをブロックするネットワーク・レベルでのオプション機能も提供している。目新しいのは、成人であっても解除できないネットワーク・レベルのブロックを導入した米国の携帯電話プランが登場したという点だ。
問題は、ほとんどのWebサイトが1つのカテゴリーにきれいに収まるわけではなく、どのサイトを許可しどのサイトを禁止するかについて、フィッシャー創業者に膨大かつ主観的な裁量が与えられてしまうことだ。これはジェンダー・アイデンティティに関連するコンテンツをブロックしようとする取り組みにおいて最も顕著に現れている。
アロットのアンソニー・レ営業部長は、同社にはジェンダーに特化したカテゴリーはないが、「LGBTコンテンツ」はセクシュアリティのカテゴリーに分類される傾向があると述べる。このカテゴリーはラディアント・モバイルのWebサイトで「ポルノを含まない、セックス、セックスと10代、性教育に関する情報を提供するサイト」と説明されている。このカテゴリーは全端末でデフォルトでブロックされており、成人のアカウント所有者が設定を変更できる。
しかし、あるニュースサイトがジェンダー関連のコンテンツを十分な量掲載するようになった場合、フィッシャーはそのサイトを許可されている「プレス」としてだけでなく「セクシュアリティ」としても分類し、そのカテゴリーをブロックしているすべての端末でドメイン全体をブロックする可能性がある。
フィッシャー創業者はこうした判断の主観性を、最近のイェール大学に関する事例を挙げて説明する。イェール大学の一般向けのWebサイト(www.yale.edu)はアロットによって教育カテゴリーに分類されている。「しかし、彼らのサイトの1つには、トランスジェンダーの平等に完全に特化したサブセクションがあります」とフィッシャー創業者は言う。これは、lgbtq.yale.eduを指している。サブドメインは独立したサイトとして見なすことができるため、ラディアント・モバイルはこれをセクシュアリティに分類してブロックする。
イェール大学のメインサイトは今のところブロックされていない。「イェール大学のトップページにLGBTQコンテンツが継続的に掲載されるようになれば、そちらもブロックします」(フィッシャー創業者)。
Webサイトのブロックリストを管理することは、フィッシャー創業者にとってキャリアの大きな転換点となる。彼はこれまで通信業界ではなく、ファッション業界でキャリアを積んできた。ナオミ・キャンベルやヒルトン家、ゲティ家のメンバーといったスーパーモデルのエージェントを務め、後にリハビリ施設やホームレス・シェルターにいる人々を発掘してモデルに育てようとするリアリティ番組で司会をした。最終的に業界を離れた彼は今、自分がその業界で果たした役割を後悔していると語る。「35年間スターモデルやスターインフルエンサーを生み出してきたことを誇りに思っているかと言えば、まったくそうではありません」。
昨年、友人でファッション界の大物でもあるバーント・ウルマンが、ライアン・レイノルズが「ミント・モバイル(Mint Mobile)」という携帯電話ネットワークで成し遂げたことを参考にするよう勧めた。ミント・モバイルは携帯電話プランの購入を、公共サービスの手続きではなくブランドを選ぶような体験に変え、2023年にT-モバイルに13億ドルで買収された。フィッシャー創業者はそのビジネスモデルを気に入ったが、ターゲットとなる顧客層が思い浮かばなかった。そこに深夜の啓示が訪れた。「神が私に語りかけてきました」とフィッシャー創業者は振り返る。「信仰に基づく業界で何かをしなさい、と」。それから彼は、キリスト教に適合すると判断されたコンテンツのみを提供する初の携帯電話ネットワークの構築に乗り出した。
フィッシャー創業者によれば、同社はラディアントとT-モバイルの間の技術的な仲介役を担う企業の一部であるコンパックス・ベンチャーズ(Compax Ventures)から1750万ドルの投資を受けたという。エヌビディア(Nvidia)のロジャー・ブリングマン副社長がラディアント・モバイルの主要投資家であり、サイレント・パートナーでもある(ブリングマンは最近、テキサス州のオースティン・クリスチャン大学に新しい施設を資金提供した。同大学は「キリスト教徒の起業家のための大学」を標榜している)。
ブロックされるサイトによって生じる空白を埋めるため、同社はAI生成の聖書動画を含む宗教コンテンツのライブラリへのアクセスを提供する予定だ。シンデレラやティンカー・ベルなどのキャラクターも活用する計画で(エンターテインメント・メディア企業のエルフ・ラボス=Elf Labsから権利を取得済み。同社は数百もの子ども向けキャラクターの権利を集積している)、「これらのキャラクターはもともと保守的な視点で作られていました」とクリミスCOOは言う。これらはAI生成コンテンツとして、証言や信仰の言葉とともに活用される予定だ。
チョフネス教授はこのプランのファイアウォールが期待通りの効果を発揮するかどうかについて技術的な疑念を持っている。その理由として、「問題があると思われるすべてのWebサイトのリストを作成するのは非常に難しい」ことを挙げる。しかしそれ以上に、彼はインターネットが煩わしい面はあるにせよ、閉じているよりも開かれている方が良いと考えている。「私はオープンなインターネットを信じています。インターネットの多くが有害であることも認めますが、コンテンツをブロックするという、ハンマーで叩くような手法が正しい答えだとは思いません」。
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- 自律自動車や外科用ロボット、チャットボットなどのテクノロジーがもたらす可能性とリスクについて主に取材。MITテクノロジーレビュー入社以前は、PBSの報道番組『フロントライン(FRONTLINE)』の調査報道担当記者。ワシントンポスト、プロパブリカ(ProPublica)、WNYCなどのメディアにも寄稿・出演している。