KADOKAWA Technology Review
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直感頼みのLLMに
「第37手」は打てるか?
AlphaGo開発者の提言
Stephanie Arnett/MIT Technology Review | Getty Images,
人工知能(AI) Insider Online限定
Don’t be fooled—LLMs don’t reason

直感頼みのLLMに
「第37手」は打てるか?
AlphaGo開発者の提言

AlphaGo(アルファ碁)の「第37手」は機械の直感の産物と語られがちだが、実際には先の展開を比較検討する探索から生まれた。次のトークンを予測し続ける今日のLLMは、こうした推論を備えていない。医療や科学のようにリスクの高い分野では、AIがどう結論に至ったかまで検証できなければならない。AlphaGoチームの中核メンバーだった筆者は、そのためにこそ真の推論が必要だと説く。 by Thore Graepel2026.10.06

この記事の3つのポイント
  1. 現在のLLMは直感的な予測の繰り返しに過ぎず真の推論能力を欠いている
  2. AlphaGoは直感と探索を組み合わせ認識論的状態を更新し続け第37手を導いた
  3. オープンワールドは複雑だがLLMの進歩で検証可能な推論システム構築が可能になりつつある
summarized by Claude 3

2016年3月のある日の午後、ソウルで私は、自分が開発に携わったプログラムが、囲碁盤の五線に石を置くのを見た。それはまるで人間の対戦相手に有利を差し出すかのような一手だった。五番勝負の第2局における第37手はあまりに不可解で、一部の解説者はプログラムの不具合だと考えたほどだった。

しかしそれは不具合ではなかった。AlphaGo(アルファ碁)はこの対局に勝利し、史上最高の囲碁棋士の一人であるイ・セドルに最終的に4勝1敗で勝ち越した。「AlphaGoは確率計算に基づいているだけの、単なる機械だと思っていました」とイは対局後に語った。「しかしこの一手を見て、考えを変えました。AlphaGoには間違いなく創造性があります」。

1997年にDeep Blue(ディープ・ブルー)が当時の世界チェスチャンピオンだったガルリ・カスパロフを破った際、同プログラムは各プレイヤーについて6手から8手先まで読み、毎秒2億局面を評価していた。そこで用いられていたルールは人間がハードコーディングしたものだった。囲碁ははるかに複雑なゲームだ。石の価値は、数十手にわたって展開される離れた石の集団や地の行方によって決まる。可能な結果のほんの一部を計算するだけでも、スーパーコンピューターで数十億年かかるだろう。勝利するためにAlphaGoは、一目見ただけでどちらが優勢かを感じ取り、さらには人間が思いつかなかったような手を編み出す必要があった。

だからこそ、AlphaGoとイの対局に関する多くの記述は、第37手を純粋な機械の直感がひらめいた瞬間として描いている。しかしそれは誤解だ。実際にこの創造的な選択をもたらしたのはAlphaGoの推論能力であり、それは今日のAIに欠けている能力なのだ。科学や医学といった分野で、将来のAIシステムに信頼できる結果や真に新しい知見を生み出させたいのであれば、この種の真の推論能力を備えさせる必要がある。

AlphaGoは2つのシステムから構成されている。1つ目はポリシーネットワークで、強い人間ならどの手を打つかを推測するよう訓練されている。この「直感的」な部分は、第37手を有力な手とは評価していなかった。熟練した人間のプレイヤーがこの手を打つ確率は、約1万分の1と見積もられていたのだ。AlphaGoがこの手を選んだ理由は、プログラムの探索機構にある。この機構は目先のもっともらしさを超えて、提案された手が将来もたらす結果を比較検討する。AlphaGoは、それぞれが異なる未来の可能性を表す数千もの分岐を持つゲーム木を明示的に構築し、探索していたのだ。

ダニエル・カーネマンによって広められた行動科学におけるよく知られた理論は、人間の思考を2つのモードに区別する。「システム1」は速く、直感的で、努力を要しない。「システム2」は遅く、段階的で、熟慮を伴う。AlphaGoはこの区別の機械版とも言える顕著な例を示した。ポリシーネットワークが「この手は有望そうだ」「この局面は勝っていそうだ」といった勘を提供し、探索機構がその勘を、続く一連の手と応手に照らして検証するという熟慮の部分を提供したのだ。人間の認知と同様に、どちらか一 …

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