KADOKAWA Technology Review
×
No One Knows How Much Oil Is Being Stored Around the World

石油生産量が減るのはいつ?
答え「本当に誰も知らない」

石油備蓄量を明かさない国が多いことは、石油価格の決定メカニズムは誰も真実を知らない状態で繰り広げられるゲームということだ。 by Michael Reilly2016.07.26

もし存在するのだとしても、石油ピーク(石油算出量が最大になる時点のこと)は変動する点であり、何年何月とは指し示せない。しかし、どれほどの石油が地上や、船倉、世界中の貯蔵施設にあるか測定しても、石油ピークは変動してしまうとわかった。

石油をどれだけ産出したか、人類は根本的に測定できないのではなく、多くの国が、自国の石油備蓄量を報告していないのだ。

中国を例にとると、国内の推定使用量をはるかに上回る量の石油を買い占めている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、アナリストは1.6億バーレル(約2160万トン)の余剰量は、中国の2週間分の供給を賄うのに十分であり、内訳は商業用貯蔵庫か国家の戦略的石油備蓄庫のどちらかだ。もし、国の貯蔵庫に回されているなら、中国の原油需要は備蓄が最大量に達したとたんに減少する可能性があり、市場価格に影響をおよぼしかねないが、まだそうはなっていない。

 

一方、シンガポール周辺に停泊中の船には、4300万バーレル(約581万トン)もの石油が積載されていると見られている。しかし、船の積み荷は、海中に沈んでいる船体の深さから推定しているため、船に石油が積まれておらず、船倉が海水で満たされているのかもしれない。

多くの先進工業国が定期的に自国の石油備蓄量を報告している一方で、世界経済の大部分が備蓄量を明らかにしていない。石油資源に恵まれた、アンゴラやブラジル、ナイジェリアなどは、生産量が業界専門家の最も正確とされる見積もりどおりにならないことがある。

したがって、世界の石油価格は、膨大な当て推量に基づいているのだ。灯油、ディーゼル燃料、ガソリンの費用の安定を願う人には心配な話だ。しかし、自国の備蓄量を明らかにしない国は、口外しないことにより、予測不可能な世界で優位に立てると思っているのかもしれない。

関連ページ

人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Three reasons robots are about to become more way useful  生成AI革命の次は「ロボット革命」 夢が近づく3つの理由
  4. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
タグ
クレジット Photograph by Gerard Julien | Getty
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Three reasons robots are about to become more way useful  生成AI革命の次は「ロボット革命」 夢が近づく3つの理由
  4. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る