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Perfect Online Privacy 完璧なオンライン・プライバシー

本当の意味のインターネット・プライバシーが、やっと実現した。たとえば、誕生日を明かすことなく18歳以上だと証明したり、銀行口座残高などの詳細を明かすことなく金融取引をするのに十分な財産を持っていることを証明したりできるの …

by MIT Technology Review Editors 2018.03.02

MIGUEL PORLAN

本当の意味のインターネット・プライバシーが、やっと実現した。たとえば、誕生日を明かすことなく18歳以上だと証明したり、銀行口座残高などの詳細を明かすことなく金融取引をするのに十分な財産を持っていることを証明したりできるのだ。これによって、プライバシーの侵害や個人情報が盗まれるリスクが限定される。

このツールは「ゼロ知識証明」とよばれる新しい暗号プロトコルだ。研究者はこのプロトコルに数十年間も取り組んできたが、暗号通貨に取りつかれる人が急増したこともあり、2017年になって急に注目されるようになった。暗号通貨のほとんどでプライバシーが守られているわけではないからだ。

完璧なオンライン・プライバシー

ブレークスルー
コンピューター科学者は、実証に必要な情報を明かさずに証明する暗号ツールが完成させた。
なぜ重要か
オンライン上で何かをするために個人情報を入力しなければならない場合でも、簡単にプライバシーを守り、なりすまし犯罪被害にも遭わずにすむようになるだろう。
キー・プレーヤー
Zキャッシュ(Zcash)、JPモルガン・チェース、ING
実現時期
実現済み

実際に信用できるゼロ知識証明を使った暗号通貨が、Zキャッシュ(Zcash)だ。Zキャッシュは2016年後半に運用を開始した電子通貨で、Zキャッシュの開発者はzk-SNARK(非対話型ゼロ知識証明)という方法を使ってユーザーに匿名で取引させている。

取引が誰でも見られるビットコインや他のパブリック・ブロックチェーン・システムでは通常ありえないことだ。取引は理論上匿名だが、他のデータと結びつけられると追跡されユーザーの特定までもが可能になるからだ。時価総額が第2位の暗号通貨イーサリアムの考案者であるヴィタリック・ブテリンによれば、zk-SNARKは「まさに革新的なテクノロジー」だという。

このテクノロジーを使えば、銀行は顧客のプライバシーを危険にさらすことなく、決済システムにブロックチェーンを導入できるかもしれない。2017年、JPモルガン・チェースが独自のブロックチェーン・ベースの決済システムにzk-SNARKを取り入れた

周囲の期待は大きいものの、zk-SNARKは計算負荷が重く、動作が遅い。またzk-SNARKでは、悪用された場合、すべてのシステムを危険にさらす可能性のある暗号キー、いわゆる「信用された設定(trusted setup)」を作らなければならない。研究者は、ゼロ知識証明をさらに効率的に取り入れ、そうした暗号キーを必要としない別の方法を模索中だ。

(マイク・オルカット)

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