フラッシュ2022年6月4日
理研、炎症性腸疾患に対する漢方薬の効能を科学的に検証
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]理化学研究所(理研)の研究チームは、指定難病・炎症性腸疾患に対して漢方薬「大建中湯」が効果を発揮する仕組みを科学的に解明した。これまで医師などの経験に基づく処方が中心だったが、仕組みが明らかになったことでより適切な処方が可能となる。
研究チームはデキストラン硫酸ナトリウム塩を投与して大腸に炎症を発生させたマウス(炎症誘導マウス)を用意。大建中湯を投与した炎症誘導マウスと比較した。炎症誘導マウスの糞便の網羅的細菌叢解析を実施したところ、炎症を起こさせただけのマウスではディスバイオシスという腸内フローラの多様性が低下していたのに対し、大建中湯を投与したマウスではディスバイオシスの多様性が改善されていた。
大建中湯を投与したマウスでは、未投与のマウスと比較してファーミキューテス門の細菌が維持されており、増加したファーミキューテス門はラクトバチルス属であることが分かった。つまり、炎症状態では大建中湯がラクトバチルス属を増加させることで、腸内環境の改善に寄与していることが分かった。
加えて、それぞれのマウスの糞便における代謝物を解析したところ、大建中湯を投与したマウスでは、プロビオン酸が有意に増加。大腸において代謝物の影響を受ける免疫応答を調べるため、フローサイトメトリーを使用して大腸のリンパ球の細胞分布と細胞数を調べたところ、大建中湯を投与したマウスではサイトカインの一種であるインターロイキン-22を多く産生する3型自然リンパ球、中でもリンパ組織誘導性のものが増加していた。この3型自然リンパ球は、プロビオン酸受容体を強く発現していた。
研究成果は6月2日、フロンティアーズ・イン・イミュノロジー(Frontiers in Immunology)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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