フラッシュ2022年9月23日
-
東大が光がん治療で新手法、赤色光でがん細胞をピンポイント攻撃
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学の研究チームは、赤色パルスレーザー光が当たったときのみ、薬剤を放出してがん細胞を攻撃する物質「有機金属フタロシアニン」を使った光がん治療法を考案した。
従来の光がん治療法では、光エネルギーで活性酸素を発生させ、がん細胞を攻撃する。標的となるがん細胞のアポトーシス(あらかじめ予定されている細胞死)を誘導しにくく、腫瘍組織の低酸素領域では治療効果が低い点が課題だった。そこで研究チームは、赤色光を吸収するフタロシアニンに、アルキル基を有する有機金属錯体を組み合わせた「有機金属フタロシアニン」を開発。これを使用した治療法の原理を考案した。
有機金属フタロシアニンは室内光下では安定しているが、赤色パルスレーザー光を当てるとさまざまな生体分子と反応し、アポトーシスを誘導するアルキルラジカルやアルデヒドなどの薬剤を放出する。アルキルラジカルの生成は酸素濃度に関係なく進行し、周辺の正常細胞にダメージを与えにくいことから、新しい光がん治療法として期待できる。また、有機金属錯体のアルキル基にさまざまな薬剤を導入することが可能で、薬物送達システムとしての応用が期待できるという。
研究成果は9月20日、ケミカル・コミュニケーションズ(Chemical Communications)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
-
- 人気の記事ランキング
-
- Inside the race to find GPS alternatives GPSに代わる選択肢を、 地球低軌道で100倍強い 次世代測位システム
- Promotion MITTR Emerging Technology Nite #33 バイブコーディングって何だ? 7/30イベント開催のお知らせ
- Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2025 「Innovators Under 35 Japan」2025年度候補者募集のお知らせ
- Trajectory of U35 Innovators: Yoichi Ochiai 落合陽一:「デジタルネイチャー」の表現者が万博に込めた思い
- Cybersecurity’s global alarm system is breaking down 脆弱性データベースの危機、 「米国頼み」の脆弱性が露呈
- Why the US and Europe could lose the race for fusion energy 核融合でも中国が優位に、西側に残された3つの勝機