フラッシュ2022年10月11日
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理研など、巨大量子系シミュレーション用の量子回路設計法を構築
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]理化学研究所、キュナシス(QunaSys)、大阪大学の共同研究チームは、「リープ-ロビンソン限界(Lieb-Robinson bound)」を用いることで、量子力学に基づく大規模な物理系の時間変化(以降、「大規模な量子系のダイナミクス」)を高精度に計算する量子回路の効率の良い設計法を構築した。リープ-ロビンソン限界は、物理的に自然な仮定の下で、情報の伝播する速度限界を与える理論である。
研究チームは今回、量子回路で再現する量子系のダイナミクスの誤差の指標を表す「コスト関数」を効率よく計算するために、「リープ-ロビンソン限界」に着目。大規模な量子系の量子回路を設計するためのコスト関数を、量子系の時間変化の情報が伝播し得る小さな範囲の小規模な量子系のコスト関数で計算できるという性質を明らかにした。
さらに、具体的検証として、物性分野で最も単純な模型である「1次元ハイゼンベルグ模型」に対するシミュレーションで、数十キュービット(量子ビット)の量子コンピューターにおける本手法の挙動を、古典コンピューターで再現。従来手法と比べて、同じゲート数で約100倍精度よく量子系のダイナミクスを計算できることを確認した。
大規模な量子系のダイナミクスのシミュレーションは古典コンピューターでは実行困難であり、量子コンピューターの最も重要なアプリケーションとして注目されている。だが、こうしたダイナミクスを高精度にシミュレートするには複雑な量子回路が必要であり、現在実現している規模の量子コンピューターでは実行できないという問題があった。
今回の研究成果は、オンライン科学雑誌「PRXクァンタム(PRX Quantum)」に10月5日付けで掲載された。
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