フラッシュ2023年1月30日
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生物工学/医療
下水から新型コロナ感染者数を予測、北大などが高精度な新技術
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]北海道大学、大阪大学、オーストラリア連邦科学産業研究機構、塩野義製薬、AdvanSentinelの研究グループは、下水から新型コロナウイルスの感染者数を予測する技術を開発した。感染者が下水に排出するウイルスを検出することで感染者数を推測する技術については、世界中で研究が進んでいる。今回の研究では、感染者数を推測するだけでなく、5日後までの新規感染者数を高い精度で予測する技術を開発した。
研究グループはすでに、下水中のウイルス濃度から感染者数を推測する技術「EPISENS-S」法を開発しているが、この手法では雨水で下水が希釈されたときなど、下水中の固形物量が少ないときに検出率が下がる点が課題だった。今回の研究ではこの手法を改良した「EPISENS-M」法を開発した。
EPISENS-S法では、遠心分離で固形物を回収していたが、新開発のEPISENS-M法では陰電荷膜でろ過することで、固形物やウイルスを回収するように改良した。この手法を利用して、2020年5月28日から2022年6月16日までに札幌市内の2カ所の下水処理場で採取した下水を分析したところ、下水中のウイルス濃度と新規感染者数の報告との間に高い相関関係が認められた。ロジスティック回帰分析で、この手法の検出感度を評価した結果、人工10万人当たり新規報告感染者数0.69人/日の流行レベルで下水から新型コロナウイルスのRNAを50%の確率で検出できることが分かった。EPISENS-M法が世界最高レベルの検出感度を持つことを示す結果だという。
さらに今回の研究では、感染者からのウイルス排出メカニズムを考慮した独自の数理モデル(PRESENSモデル)を構築した。EPISENS-M法で測定した下水中ウイルス濃度の長期データを使って、PRESENSモデルで感染者数を予測したところ、採水日から5日後までの新規報告感染者数を高い精度で予測できることを実証できた。
研究成果は1月7日、環境インターナショナル(Environment International)誌にオンライン掲載された。今回開発した技術は、全数把握を止めた後に感染動向を予測する手段として活用できるとしている。
(笹田)
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