フラッシュ2023年1月31日
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宇宙における窒素と重水素の在り処を赤外線観測で解明=東大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学などの共同研究チームは、日本の赤外線衛星「あかり」による赤外線観測データから、宇宙空間の低温環境下(絶対温度20度以下)で窒素を含む分子が生成される化学過程に紫外線が関与していることを発見。さらに、重水素が星間空間で有機物に取り込まれている観測的証拠を初めて得た。
研究チームは今回、銀河中心方向に位置する若い大質量星の赤外線天体「AFGL 2006」の南側に広がった密度の高く温度が低い領域の7点で、2.5ミクロンから5ミクロンの間の近赤外線スペクトルを取得。詳細な解析により、低温環境下で窒素を含むシアネートイオン(OCN-)と考えられる物質の存在量が、紫外線強度の指標である別の水素の再結合線強度と明確な相関を持つことを明らかにした。
このことは、低温環境下で窒素を含むアミノ酸のような分子が生成される化学過程の初期段階で、紫外線が重要な役割を果たしていることを示唆するという。さらに、星間空間に豊富に存在する多環式芳香族炭化水素(PAH)を含む有機物に重水素が取り込まれていることを示す証拠を初めて得、有機物が重水素の隠れ家である可能性を明確に示した。
宇宙空間の低温環境下において、窒素が生命体の重要な構成要素であるアミノ酸のような複雑な分子に成長していく化学過程は、まだよく分かっていない。また、重水素は宇宙における物質進化の重要な指標とされているが、宇宙空間内ではかなりの量の重水素の存在形態が不明で、未検出のままとなっている。重水素の宇宙空間での存在形態の解明は、宇宙における物質進化に関わる重要な課題の解決に大きな一歩となり、現在観測中のジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)での追観測で大きく発展することが期待される。今回の研究成果は、米国天文学会誌「アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)」に2022年12月23日付けで掲載された。
(中條)
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