フラッシュ2023年4月2日
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胃がん発症率、遺伝要因とピロリ菌感染の組み合わせで高く
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]理化学研究所(理研)、愛知県がんセンター、東京大学、微生物化学研究所、国立がん研究センター中央病院、佐々木研究所附属杏雲堂病院、豪州QIMRベルクホーファー医学研究所の研究グループは、世界最大規模のサンプルで胃がん関連遺伝子を探索し、胃がん発症率を高める遺伝子変異を発見した。また、遺伝子に病的変異がある人が、ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)に感染すると、胃がん発症率が著しく跳ね上がることも発見した。
研究グループは、バイオバンク・ジャパンが収集した胃がん患者1万426人、非がん対照群3万8153人のDNAと、愛知県がんセンター病院疫学研究が収集した胃がん患者1433人、非がん対照群5997人のDNAを、理研が開発したゲノム解析手法で解析した。乳がん、前立腺がん、膵がんなどの発症率に関連する27個の遺伝性腫瘍関連遺伝子を調べたところ、バイオバンク・ジャパンの検体では459個、愛知県がんセンター病院疫学研究の検体では104個の病的変異を発見した。
バイオバンク・ジャパンの検体から同定した病的変異と、胃がん発症率の関連を解析したところ、合計9種類の遺伝子(APC、ATM、BRCA1、BRCA2、CDH1、MLH1、MSH2、MSH6、PALB2)が胃がん発症率に関連していることが分かった。胃がんと診断されたときの年齢の中央値を比較すると、遺伝子に病的変異を持たない被験者は67.0歳。ATM、BRCA1、BRCA2、MSH2、MSH6、PALB2の6種類の遺伝子に病的変異を持つ被験者は62.0〜68.5歳と、病的変異を持たない被験者とあまり変わらなかった。しかし、CDH1、APC、MLH1の3種類の遺伝子に病的変異を持つ被験者の場合は、46.5〜55.5歳と10歳近く若いということが分かった。
研究グループはさらに、バイオバンク・ジャパンのデータの解析から判明した9種類の胃がん関連遺伝子の病的変異とピロリ菌感染が胃がん発症率に与える影響を調べた。これには愛知県がんセンター病院疫学研究の胃がん患者群と非がん対照群のデータを使用した。その結果、9種類の胃がん関連遺伝子のうち、相同組換え修復機能に関係する遺伝子4種類(ATM、BRCA1、BRCA2、PALB2)の病的変異とピロリ菌感染に、それぞれ胃がん発症率を高め合う交互作用があることが分かった。ピロリ菌陰性で、上記の4種類の遺伝子に病的変異を持っていない被験者の胃がん発症オッズ比を1.00とすると、ピロリ菌陰性で遺伝子に病的変異がある被験者は1.68、ピロリ菌陽性で遺伝子に病的変異がない場合は5.76、ピロリ菌陽性で遺伝子に病的変異がある場合は22.45となり、ピロリ菌への感染と遺伝子の病的変異という条件が重なると胃がん発症率が急激に跳ね上がることが分かった。
研究成果は3月29日、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine)誌にオンライン掲載された。今回の研究で、相同組換え修復機能に関係する遺伝子に病的変異を持つ人がピロリ菌を除菌することで、胃がん発症率を大きく下げられる可能性があることが分かった。
(笹田)
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