フラッシュ2023年8月2日
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気候変動/エネルギー
東北大と産総研、活性と耐久性を両立した燃料電池用触媒
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東北大学と産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)向け触媒について、表面設計指針につながる新たな実験結果を発表した。PEFCの触媒に現在使われている白金(Pt)とコバルト(Co)を原料とする遷移金属合金ナノ粒子は、触媒活性は高いものの、耐久性に課題がある。
研究グループは、触媒の材料として高温機械特性や化学的安定性が高いハイエントロピー合金(HEA:High Entropy Alloy)に注目。HEAは、5種類以上の元素を均等に近い割合で混合した合金であり、従来の合金には見られない優れた力学特性や機能特性を持つ点が特徴。
研究では、HEAをPtと組み合わせた合金(Pt-HEA)で、触媒の耐久性を高められると仮定。アークプラズマ蒸着法を利用してPt-HEAの表面近傍の構成元素分布や、最表面の原子構造を原子レベルで制御したモデル触媒表面を作製した上で、表面ミクロ構造が酸素還元反応の特性(活性や耐久性)に与える影響を調べ、酸素還元反応の特性を高める仕組みを解明する、電極触媒の実験研究手法を考案した。
この手法で作成したPt-HEA単結晶表面のミクロ構造と酸素還元反応の特性との関係を検証した結果、Pt-HEA合金が、従来のPt-Co合金を上回る酸素還元反応の特性を持つことが分かった。Pt-HEA合金は、加速劣化試験の後もPt-Co合金に比べて30%高い活性を維持しているという。
研究成果は7月26日、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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