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人工知能が脳の反応から自殺を予測、最新研究が発表 AI Has Learned to Spot Suicidal Tendencies from Brain Scans

人工知能が脳の反応から自殺を予測、最新研究が発表

米国では、15歳から34歳の若者における死亡原因の第2位は、自殺だ。現在、臨床医は自殺傾向のある人を特定するための手段をほとんど持っていない。しかし新たな機械学習の手法が、希死念慮(死にたいと考えること)に苦しむ人たちを特定することに役立つかもしれない。その手法は、10月30日にネイチャー・ヒューマン・ビヘイビア(Nature Human Behaviour)誌に発表された論文に記載されている。

研究者は、自殺傾向のある参加者とコントロール群の、計34人の成人を観察した。被験者たちは核磁気共鳴機能画像装置(fMRI)に通され、それぞれ10個の単語が記載された三つのリストを見せられた。1つ目のリストは「死」や「苦悩」「致命的」など、自殺と関連しているものだ。2つ目は、ポジティブな言葉(「気楽」「親切」「無垢」)、3つ目はネガティブな言葉(「退屈」「邪悪」「罪」)であった。研究者はまた、「恥」や「怒り」といった、脳のどこが活性化するか既に把握している感情パターンも実験に用いた。

その結果、6つの単語と脳の5カ所の領域が、自殺傾向にある患者とコントロール群とを識別する最良のマーカーであることが分かった。その単語と領域を使い、研究者が機械学習を用いて分類システムに教え込むと、分類システムは17人の自殺傾向のある患者のうち15人を、また17人のコントロール群の対象者のうち16人を特定することに成功した。

さらに研究者は、自殺傾向のある患者を、自殺未遂者(9人)とそうでない者(8人)の2つのグループに分けた。この2グループについても,分類システムは17人中16人を正確に特定した。

つまり、健常者と自殺傾向のある者とでは、言葉への反応が著しく異なるのだ。たとえば、自殺傾向のある者に「死」という言葉を見せると、健常者の群以上に脳の「恥」の領域が反応するのである。同様に、「困難」という言葉では、「悲しみ」の領域がより活性化することが分かった。

今回の研究は、人工知能(AI)を精神医学に持ち込むことを目論んだ最新の活動だ。研究者が取り組む機械学習のプロジェクトでは、深刻な抑鬱障害を予測するfMRIの解析から、人の話し方によって心的外傷後ストレス障害(PTSD)を識別するに至るまでを網羅している。2017年初頭、ワイアード誌に、健康記録をふるいにかけ、自殺の危険性がある人に警告を送るシステムを構築した研究が掲載された。このシステムの精度は、80%~90%だという。またフェイスブックは、テキストマイニングを用いることで自殺や自傷のリスクのあるユーザーを特定し、メンタルヘルスのページに導いている(「フェイスブック、自殺のライブ中継の防止機能を追加」参照)。

AIはすでに医療分野全般に大きな影響を与えている。たとえば、CTスキャンが撮影した画像内に腫瘍やその他の問題があるかどうかを検知する優れたアルゴリズムがある。深層学習研究の第一人者であるジェフリー・ヒントンニューヨーカー誌に、「放射線科医は最終的に職を失うでしょう。養成を止めるべきです」と語った。

このようなAI研究により、すべての分野で医師の仕事が失くなるというよりも、人間による新しい治療法が導き出される可能性のほうが高い。論文で指摘されているが、機械学習によって分類システムが異なるパターンを特定すれば、新しい脳の領域が治療の対象となる可能性がある。また、自殺関連の言葉に対する特定の感情反応を識別することも、患者の治療に当たる心理療法士にとって有益となるかもしれない。

jackie.snow [Jackie Snow] 2017.11.20, 6:30
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