アルファベットのスマートシティ、消えぬプライバシーへの懸念
アルファベット子会社のサイドウォーク・ラボ(Sidewalk Labs)が、カナダのトロントで手がけるウォーターフロント再開発に関する計画の詳細を初めて明らかにした。これまで前例がないほど、住民の行動を詳細にトラッキングするスマートシティを開発するこの計画では、プライバシーの課題が改めて浮き彫りになっている。
サイドウォーク・ラボは、地域のテクノロジー・ニーズを理解し、コミュニティと緊密に連携したスマートシティの新たなコンセプトの実現を目指して設立されたアルファベットの子会社だ。同社は2018年10月、トロントのウォーターフロント地区800エーカー(約325万1840平方メートル)の再開発プロジェクトを落札した。それまでに現地の住民や企業との意見交換に1年半の期間を費やしたという。
シリコンバレー企業に対する懐疑的な見方が増す中、市民グループはサイドウォーク・ラボの事業目標に疑問を抱き、市民の自由を主張する人々はプライバシーへの影響を心配している。4月には、カナダ自由人権協会が、プロジェクトの中止を求めてトロント市を訴えた。
サイドウォーク・ラボは、2018年末にデータ管理計画を発表した。計画では、プロジェクトを通じて得たデータは、第三者機関である「市民データ・トラスト」に保管され、データが販売されたり、広告のために利用されたりすることはなく、また、市民の許可なく共有されることもないとしている。
サイドウォーク・ラボが6月24日に公開した新しい「イノベーション・開発基本計画(MIDP)」でも、同社の方針はほとんど変わっていない。計画では、どこでも使える高速インターネット、インテリジェントな信号機、公共スペースでのスマートな日よけ、地下で荷物を運ぶ配送ロボット、木造住宅、熱エネルギー網の整備が約束されている。
気候変動対策も盛り込まれている。エネルギーに過度に頼らない都市生活を目指したさまざまな対策が含まれており、クリーンエネルギーに頼った省エネビルや、スマートな熱エネルギー網、サイクリングに適した環境などもある。
サイドウォーク・ラボのスマート・システムは、サービスの改善や最適化のために活用する、莫大なデータを生み出す。だが、サイドウォーク・ラボは、「世界で最も強力な都市データ管理体制」を導入するとも約束している。トロント市民、そして他のスマートシティの住民にとっての問題は、スマートシティによって得られる進歩が、プライバシー・リスクを引き換えにしても受け入れる価値があるかどうかだ。