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米司法長官らが「バックドア」設置を再び要求、合法化訴え
Photo: Department of Justice
Barr’s call for encryption backdoors has reawakened a years-old debate

米司法長官らが「バックドア」設置を再び要求、合法化訴え

7月23日、ニューヨークでのウィリアム・バー米国司法長官の演説で、暗号化データに関する議論が再燃した。発言者の顔ぶれは異なるものの、バー長官の主張は司法省関係者の長年に渡る議論の反復である。バー長官は、政府が暗号化されたデータにアクセスする必要があり、それができなければデバイスは「無法地帯」となって司法当局の妨げになると述べた。

翌24日には米国連邦検事のジェフリー・バーマンとリチャード・P・ドノヒューがバー長官の発言を支持し、シリコンバレーの巨大テック企業を辛辣に批判した。

「これらの企業は、データへの司法当局によるアクセスを拒否できると宣伝しています。彼らは宣伝していないと主張していますが、実際にアクセスを拒否しています」ドノヒュー検事は述べた。「企業は説明責任を負うべきです」。

バーマン検事もまた、議会に対し暗号化されたデータへの合法的アクセスを義務付ける法案の作成と成立を訴えた。

「私たちはバックドアについて議論しているのではありません。必要が生じた場合、司法当局が裁判所命令によるアクセス許可に対する、企業側の協力を求めているのです」(バーマン検事)。

シリコンバレーの宣伝は、誰もが認めるところだ。アップルはアイフォーン(iPhone)のプライバシーに関する正当性を強調した、国際的な商業キャンペーンを展開している。司法省もまた、重要なデータ分析競争を展開している。連邦検事の主張にも関わらず、バックドアと裁判所命令によるアクセス許可は同じ事を別の名前で呼んでいるに過ぎない。それは、強力で破ることができない暗号化の終焉である。

「現在検討されているものの中で、安全なバックドアという解決策はありません」とバー長官の発言に対して暗号の専門家であるマシュー・グリーン博士は述べた。「バー長官とトランプ政権には、合衆国憲法修正第4条の(不法な捜索や差し押さえ)禁止に対する創造的な恐ろしい解釈と、リスクを最小限に抑えたいという願望を除いて何も新しいところはありません」。

バー長官の発言はトランプ政権による暗号化に関する議論の中で最も強力なものだが、そこから何が起こるのかは不明だ。外国のテロリストや麻薬カルテルが暗号化されたメッセージ・アプリを使って暗殺を計画していることへの言及を含め、発言の一部はトランプ大統領のために仕立てられたように思える。

米国の連邦検事とともに会合に出席したドイツのマルクス・ハートマン検事は米国検事の発言には同意しなかった。米国を始めとする国家が暗号化をバイパスする法案を成立させた場合、犯罪者やテロリストは「別のサービスを利用するだけ」と話した。

「米国、ドイツ、フランス、欧州といった国々の法律が及ばない国のサービスを利用している人に対し、どのような予防策があるのでしょうか?」とハートマン検事は述べた。「ギットハブ(GitHub)を使って、オープンソースの暗号化ライブラリーをダウンロードし、エンドツーエンド(E2E)の暗号化チャット・システムを用意するのは数時間で可能です。暗号化に対処する問題は、合法的なアクセスの提供以上に幅広いものです。現在の状況は私たちに貴重なメタデータをもたらしており、司法当局が暗号化に対処する上での改善の余地はまだ数多くあります。暗号化と戦う戦略は、単に企業に合法的なアクセスを求める以上であるべきです」。

バー長官が政府による暗号化データへのアクセスを求める発言をしたことで、プライバシー保護を主張する人々やテクノロジストから批判の波が押し寄せた。さらに、米国民は暗号化データへの政府による特別アクセスを認めることに伴うサイバーセキュリティのリスクを受け入れるべきだとするバー長官の発言に対し、米国国家安全保障局(NSA)のマイケル・ヘイデン元長官までもがこれに反対するツイートをした

米国では、数十年前から暗号化に関して議論されてきた。特に過去5年間でその重要性は高まっている。2015年、米国連邦捜査局(FBI)とアップルが新聞の一面を飾るような注目度の高い法廷闘争を繰り広げた。連邦政府はカリフォルニア州サンバーナーディーノで起きたテロ事件の実行犯、サイード・ファルークの暗号化されたアイフォーンへアクセスして情報を入手しようと、アップルに暗号化の解除の強制を試みたが失敗した

アップルはFBIにアクセスさせなかったが、FBIはサードパーティ製ツールを利用して暗号化を解除した。司法当局に暗号化されたスマートフォンへのアクセスを可能にするツールを販売することは、セレブライト(Cellebrite)や解除ツールの「グレーキー(GrayKey)」を提供しているグレイシフト(Grayshift)のような企業にとっては大きな収益になりつつある。

バー長官は自身の発言の中で、世界および米国で販売された、暗号化されたスマートフォンやコンピューター、車といったデバイスへの侵入を可能にする各種ツールについては触れなかった。これは政府の暗号化データへのアクセスに関する議論において、大いなる省略だ。

政府が暗号化データにアクセスするための「キー」や「バックドア」の要求に伴う技術的な大きな問題がある。その1つは、多くのサイバーセキュリティや暗号の専門家によると、それらがすべてのユーザーのセキュリティを低下させることだ。

「バー長官は、米国民のデジタル生活を守るための最も重要なセキュリティの1つに穴を開けるために、うんざりするような、誤りが証明されている計画を提案しました」と23日、民主党のロン・ワイデン上院議員は話した。「バー長官は強力な暗号を弱体化させ、政府が国民個人のデバイスにバックドアを仕込めるように要求をしているのです」。

パトリック・ハウエル・オニール [Patrick Howell O'Neill] 2019.07.31, 6:50
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