名城大・吉野教授らリチウムイオン電池の先駆者にノーベル化学賞
化学は進歩し続けるが、リチウムイオン電池ほどの影響力を持つ発明はそうそう生まれないだろう。
軽量でコンパクトなリチウムイオン電池は、スマホやノートパソコン、電気自動車、そして電力システムを含むさまざまな用途に役立てられ、現代世界の大きな動力源となっている。10月9日、リチウムイオン電池の開発で主要な役割を担った3人の科学者がノーベル化学賞を受賞し、90万ドルを超える賞金を分け合った。
エネルギー密度が極めて高く、携帯用製品に適した電池を作り出すためには、軽量で反応性に富む素材が必要だ。スウェーデン王立科学アカデミーの解説によると、リチウムはこの条件にピッタリで、固体元素の中で最も軽く、電子を放しやすい性質を持っている。電子とはマイナス電荷を帯びた粒子で、電池の電極間を流れる電子の働きによって電流が発生する。
ノーベル委員会は、1970年代初期に「最初の実用的リチウム電池を開発した」ニューヨーク州立大学ビンガムトン校のスタンレー・ウィッティンガム教授、1980年代に「リチウム電池の可能性を倍増させた」テキサス大学オースティン校のジョン・グッドイナフ教授、 1985年に電池の素材を純粋なリチウムから(電子の欠落または余剰によって電荷を帯びた)リチウムイオンに切り替えることで、火災を起こしやすかったリチウム電池の安全性を高めることに貢献した名城大学の吉野彰教授に賞を授与した。
安全性の向上が、リチウム電池を商品化する鍵だった。1991年、ソニーと旭化成が初めての生産に着手し、リチウムイオン電池は間もなくビデオカメラ、コンピューター、MP3プレーヤー、携帯電話などの製品に利用されるようになった。リチウムイオン電池の性能と価格は改善され続け、その需要・生産は学界と産業界の予想を上回る勢いで急速に拡大してきた。
それでも、リチウムイオン電池の能力にも限界がある。それに加えて、安全面での問題も進行中だ。電気自動車とガソリン車の価格差を縮めるためには、もっとコストを下げなければならない。トラック輸送業、海運業、航空輸送業などの大半を電気化するには、軽量性もパワーもまだ不足している。電池を研究する専門家の多くは、太陽光発電や風力発電が主要な発電手段となっていく中で、発電量の揺らぎを調整するために十分安価で長期的に持続するエネルギー貯蔵を実現するためには、リチウムイオン電池とは全く異なる化学的アプローチが必要になるだろうと述べている。