オシリス・レックスが捉えた、小惑星ベンヌの粒子放出
米国航空宇宙局(NASA)の オシリス・レックス(OSIRIS-REx )ミッションによって、小惑星ベンヌ(Bennu)の表面から破片が放出されている様子が撮影された。こうした現象を直接画像に残すことができたのはこれが初めてだが、科学者たちは困惑している。なぜ起こるのか、理由がわからないのだ。
12月6日、サイエンス誌に発表された新しい研究成果によると、2019年1月から2月にかけて3回の放出現象が観測されている。それぞれ数百センチサイズの粒子が地表から飛び散り、宇宙空間を突き進むものもあれば、ベンヌの軌道に止まり、最終的にベンヌの地表に戻ってくるものもあった。
この現象によって、ベンヌは「活動」小惑星に分類されることになる。つまり、質量を失うということだ。科学者たちはその原因となる可能性を3つのメカニズムに絞り込んだ。急激な温度変化による亀裂(ベンヌの場合、温度は4.3時間ごとに126.85℃から-23.15°Cの間で変動する)、粘土鉱物の乾燥、流星塵の衝突だ 。
科学者らは、ベンヌが破片を排出できるとは考えてもみなかった。これらの粒子を放つために必要な活動は「クラッカーを破裂させるのに必要なエネルギーとほぼ同じ」(セントラルフロリダ大学の共同研究者でありオシリス・レックスのチーム・メンバーのフンベルト・キャンピンズ博士)。地上および宇宙ベースの機器が検出するには低すぎるレベルだ。それでもオシリス・レックスが検出できたのは、距離がベンヌに十分近かったからだ。
有機分子と採掘可能な水が豊富なベンヌのような小惑星は、探査対象としてとても魅力的だ。したがって、ベンヌのような組成の他の小惑星もまた活動する可能性があるということだ。この種のミッションに新たな安全上の懸念が生じることになる。
観測されたベンヌでの活動は、オシリス・レックスのミッションにとって危険ではないものの、未知の活発な活動期間が存在するかどうかは分かっていない。 ベンヌや他の同様の小惑星には、粒子を放出する期間が存在する可能性があり、粒子の大きさや量によっては多くの宇宙船の安全性が脅かされることになる。
オシリス・レックスは引き続きベンヌを探査し、地表サンプルの収集を試みる。その後、地球への帰還ルートにつき、2023年9月にはサンプルを地球に持ち帰る予定だ。