KADOKAWA Technology Review
×
The U.K.’s Largest Sperm Bank Is Now an App

精子選びもプッシュ通知
1回約1200ドルで配達

40年間かけて発達してきた生殖テクノロジー、ついに「ご利用はお気軽に」を実現。 by Julia Sklar2016.09.29

アプリがあれば、欲しいときに欲しいモノを何でも注文できる時代だ。ディナー、車のサービス、そして精子。え?。

ロンドン精子バンク(英国で最大級)は、子どもを持ちたい人の希望をかなえるために必要な体液の確保プロセスを近代化するアプリを発表した。

アプリは基本的に、ロンドン精子バンクが提供するフィルター検索機能つきWebサイトのモバイル版にすぎない。しかし、デスクトップ・サービスをモバイル機器向けに提供するというシンプルなサービスによって、ロンドン精子バンクは生殖テクノロジーを利用しやすくすること以上のことを成し遂げた。

アプリによる精子選びは、自然な成り行きに思える。1991年に体外受精(IVF)で私が母親のお腹に宿された時、私の母は、基本的には精子ドナーのバインダーを手渡されただけだ。データベースがWebサイトに移って久しいが、今やモバイル・プラットフォームによって、これまで以上に多くの人をつなげられる。

ロンドン精子バンクでは、新しいドナーが利用可能になると、すぐにユーザーにプッシュ通知を送ることを重要な機能だと捉えている。プッシュ通知は、条件に合う男性を探す女性が、精子探しを素早く済ませる助けになる。生殖テクノロジーの利用者は、受胎までに何年もかかることもあるから、このプロセスのどの部分でも早まることは、ありがたい時間の節約になるのだ。

しかし、ロンドン精子バンクには1万件以上が登録されており、フィルター検索でも手間がかかることがある。この問題に対処するため、アプリは、さらに条件を絞ったユーザーが、ドナーに何を求めているのかをあらかじめ設定でき、条件を満たすと通知が受け取れる、「欲しい物リスト」機能も提供している。

モバイル上でのサービスの仕組みは、出会い系アプリの「ティンダー」と比較されるが、スワイプでドナーを選ぶ(ティンダーは、好みに合う合わないを左右のスワイプで即座に決めるのが特徴)わけではない。欲しい物リスト機能は、求職者が次にしたい仕事を見つける「アンソロジー」などのアプリのほうが近い。

iPhoneのアップ・ストアでクイック検索すると、このようなモバイル・サービスが他にもいくつか表示されるが、ロンドン精子バンクのアプリは非常に広範にスクリーニング(いくつかの医師会と英国政府のヒトの受精および胚研究認可局すべてが支持している)されたドナーを持つ唯一のアプリだ。

政府と医師会の支援は、アプリが成功と信頼を得るには不可欠だ。親になるかもしれない多くの人にとって、身体的特徴は、精子のドナー選びで、確かに大きな役割を果たすが、ドナーの病歴を入念に検査することは、極めて重要な必須条件だからだ。

アプリは無料でダウンロードできる。そして精子の注文価格は、ロンドン精子バンクのカタログを通して注文するのと違いはなく、注文1件あたり約1200ドルだ。安全性確保のため、標本は個人の住所ではなく、不妊治療センターにだけ送られる。

英国は、生殖テクノロジーの開発の先駆けだ。世界で初めてのIVF出産児は、1978年生まれのルイーズ・ブラウンさんで、その後すぐ1981年に米国が続いた。それ以後、生殖テクノロジーは改善され続け、はるかに良くなった。1978年には約5%だったIVFの成功率は現在40~50%だ。

母親の妊娠を補助する治療が進歩したのだから、同様に最初の段階で精子ドナーを見つけるためのテクノロジーが進化するのも、理にかなっている、というわけだ。

人気の記事ランキング
  1. OpenAI teases an amazing new generative video model called Sora 動画でも生成革命、オープンAIが新モデル「Sora」を発表
  2. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #27 MITTR主催「アクセシビリティとテクノロジー 」開催のご案内
  3. How sulfur could be a surprise ingredient in cheaper, better batteries 米ベンチャーがリチウム硫黄バッテリーを生産、EV搭載はいつ?
  4. How virtual power plants are shaping tomorrow’s energy system 解説:送電の概念を変える「バーチャル発電所」とは何か?
タグ
クレジット Photograph by Stéphane Moussie | Flickr
ジュリア スクラー [Julia Sklar]米国版 ソーシャルメディア担当編集者
MIT Technology Reviewのソーシャルメディア担当編集者。マルチメディアと、新しく創造的な物語の形態に関心があります。ボストン大学で科学ジャーナリズムの大学院課程を修了しています。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. OpenAI teases an amazing new generative video model called Sora 動画でも生成革命、オープンAIが新モデル「Sora」を発表
  2. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #27 MITTR主催「アクセシビリティとテクノロジー 」開催のご案内
  3. How sulfur could be a surprise ingredient in cheaper, better batteries 米ベンチャーがリチウム硫黄バッテリーを生産、EV搭載はいつ?
  4. How virtual power plants are shaping tomorrow’s energy system 解説:送電の概念を変える「バーチャル発電所」とは何か?
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る