KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
特撮映画の巨匠が発明 4K×3Dの超絶映像体験
カバーストーリー 無料会員限定
Restoring the Allure of the Movie Theater

特撮映画の巨匠が発明 4K×3Dの超絶映像体験

映画製作者のダグラス・トランブルが、まさに現実としか見えないフィルム形式と映写方式を発明したのは、映画という娯楽を改善するためだ。映画産業をどう振り向かせるのか。 by Elizabeth Woyke2016.10.07

マサチューセッツ州バークシャーヒルズにあるごく小さなプライベート・シアターで、映画製作者のダグラス・トランブル監督は自身の最新作を上映している。最初、その映画は見覚えがあるような気がする。2~3年前にYouTubeで広まった動画クリップで、デビッド・ボウイの「スペース・オディティ」を歌う宇宙飛行士クリス・ハドフィールドのフィルム映像である。

https://www.youtube.com/watch?v=poZCINzxzrQ

しかし曲の半ばで、国際宇宙ステーション内でギターを弾き鳴らすハドフィールドから惑星や恒星の3D映像に変わると、あまりの緻密さに、あたかも自分が国際宇宙ステーションのキューポラ(観測用モジュール)の窓から眺めているような感覚に陥る。大きく映された地球が視野に広がり、回転を始める映像は、3Dメガネを着用しているとは思えないほど、通常の3D映画よりもずっと明るくシャープだ。隣の観客は「あり得ない」「すごい」とつぶやいている。

https://www.youtube.com/watch?v=_gJdhW71ypA

プライベート・シアターで使われているシステム「Magi」は、映像を4Kの超高画質で、しかも3Dで記録し、通常の5倍のフレームレートで再生する。トランブル監督は、通常の3Dや巨大スクリーンIMAXよりも、実体験のように感じられる映画を製作し、映画館に行く喜びを取り戻す方法としてMagiを開発した。

74歳のトランブル監督は、生涯を通じて、観客が体験する映画のイリュージョンについて考えてきた。ロサンゼルスで育ったトランブル監督は、シネラマ(わん曲した横長スクリーン)でワイドスクリーン映画の世界に魅せられた。20代で『2001年宇宙の旅』の視覚効果を担当してハリウッドでの初仕事をすると、その後2つのカルト的作品『ブレインストーム』と『サイレント・ランニング』の製作を指揮し、『ブレードランナー』、『未知との遭遇』、映画版『スタートレック』の視覚効果デザインを手がけた。映画館の魅力は今失われているが、トランブル監督は観客がストーリーと密接につながり、鮮明に登場人物の視点を体験できるMagiの「ハイパーリアリティ」により、もう一度観客をワクワクさせたいと願っている。

3Dがほのぼのとしたドラマやその他多くの従来型映画と相応しくないように、Magiがすべての映画に適しているわけではない。しかし、宇宙ステーションのデモ映画で地球の画像を見て感じたのは、映画製作者が視聴者に感覚的な形で畏敬の念を抱かせたいなら、Magiを使って欲しい、とトランブル監督は考えていることだ。

「私の関心は、観客にとって奥深い直接的な体験を創造することです。それが何であろうと、スクリーン上で起きていることが、まるで映画館の中で、実際にリアルタイムで皆さんに起きていると感じてもらいたいのです」

映画業界は何らかのマジックを使えるかもしれない。何年もの間、北米の映画館の収益はおおむね平行線を辿っている。多くの消費者は、テレビやモバイル端末のメーカーがよりシャープで明るく、色を忠実に再現する画面を開発するようになってから、映画鑑賞を便利さや価格で評価するようになった。

これまで以上によいものを開発するために、トランブル監督はバークシャーの広大な所有地にスタジオを建設した。複数のタスクをこなすクルーをプロジェクトに応じて4人~50人雇い、ひとつの映画で異なるフレームレートや解像度を組み合わせる手法など、一連のデモを作成して新たな映画技術をテストしてきた。そのうえトランブル監督は、Magi映画の上映に最適化された新型の映画館を作り上げたのだ。

こうしたトランブル監督の自給自足的な手法が可能にするのは、午前中にアイデアが浮かんだら、午後に撮影し、夜にはスクリーンで上映できることだ。独力で事に当たることはトランブル監督の性格に合っていたが、その試みはときにトランブル監督を苛立たせた。

「私は新たな試みのワクワク感が心から好きですが、実現のために人生の長い年月をかけてしまいました。また、自分自身でこの試みにかかる資金を負担し、すべてのことを負担したのは、陸に上げられた魚のように苦しいものでした」

しかし、Magiのような技術で、映画館で映画を観る体験をよくしようと願っているのは、トランブル監督だけではない。映画監督のアン・リーは最新作(『ビリー・リンの永遠の一日(Billy Lynn’s Long Halftime Walk)』(日本公開は2017年2月)の一部を4K解像度、3D、ウルトラハイ・フレームレートを組み合わせるという、トランブル監督と似た …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. Interview with Prof. Masayuki Ohzeki: The Future of Quantum Computer Commercialization and the Qualities of Innovators 量子技術を最速で社会へ、大関真之教授が考えるイノベーターの条件
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. Robot-packed meals are coming to the frozen-food aisle 「手作業が早い」食品工場でもロボット化、盛り付け完璧に
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る