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「政商」化するアマゾン、米政府の重要インフラでシェア圧倒
知性を宿す機械 Amazon is the invisible backbone behind ICE’s immigration crackdown

「政商」化するアマゾン、米政府の重要インフラでシェア圧倒

アマゾンが米国政府による監視活動を支える主要インフラを提供している、との調査報告が公開された。アマゾンは政府となれ合い、巨額の政治資金を背景に政府との巨額の契約を結んでいるとも指摘されている。 by Karen Hao2018.11.14

今年6月、米国移民税関執行局(ICE)が移民の親子引き離し政策を執行し始めた時、それを支援するソフトウェアを当局へ提供した複数のテック企業へ批判の声が上がった。

批判の中心は、捜査案件管理システム(ICM:Investigative Case Management system)を設計したデータ・マイニング会社のパランティア(Palantir)だった。ICMは、公共データと民間データの巨大なエコシステムを統合して移民を摘発し、多くの場合国外追放処分とするもので、移民税関執行局の追放業務に欠かせないシステムとなっている。

このソフトウェアが実際どのように機能するか、移民税関執行局がどれだけ広範囲にわたって活用しているかはあまり分かっていない。しかし、トランプ政権誕生から9カ月間で、移民税関執行局の逮捕率は前年同期比で42%上昇した。公民権運動家と移民運動家によれば、ICMはかつてない規模で監視社会を強化させ、移民を確保しているという。

10月22日に公開された新たな調査書は、パランティア以外にも複数のテック企業が移民税関執行局とその上層機関である米国国土安全保障省(DHS)の支援に関わっていることを明らかにしている。

活動家団体のミエンティ(Mijente)、全米移民プロジェクト(National Immigration Project)、移民保護プロジェクト(Immigrant Defense Project)の依頼でまとめられたこの報告書によると、アマゾンもパランティアに負けないほど多くの主要インフラを移民税関執行局と国土安全保障省の重要プログラムに提供し、中心的な役割を担っているという。アマゾンは連邦政府と馴れ合い関係を築き、政府との大規模な契約を多数獲得しているとも報告されている。

「最近ますます顕著になってきているのは、テクノロジー関連の費用が移民税関執行局の予算のかなりの部分を占め、現場の取締りに欠かせないツールになってきていることです」とミエンティのジャシンタ・ゴンザレスは指摘する。

アマゾンが支えている

2017年、ニュースサイトのインターセプトの調査により、ICMがさまざまな連邦政府および民間の法執行機関からデータを集め、詳細なプロフィールを作成し、移民の摘発に利用していたことが明らかになった。データには、個人の移民としての履歴、家族関係、個人的な人間関係、住所、通話記録、生体的特徴、その他の情報が含まれていた可能性がある。

ICMに利用されるデータとアルゴリズムはすべて、現在はアマゾンWebサービス(AWS)へ丸ごと移行されている。パランティアはサーバー使用料としてアマゾンへ月に約60万ドルを支払っていると、報告書は記している。

移民税関執行局からアマゾンへ直接金が流れているわけではないが、パランティアがAWSを選択するためのお膳立ては整えられていた。というのも、パランティアが政府との契約を取り付けるために、ICMは連邦政府に認可されたクラウド・サービスでホストされる必要があったからだ。オンラインの政府データベースによると、アマゾンはFedRAMPプログラムの下で政府に認可されたうちの22%を占める最大シェア企業となっていることが分かる。FedRAMPプログラムとは、クラウド提供会社が政府のデータを処理、保存や送信するのに必要なセキュリティ要件を満たしているかどうかを検証するものだ。さらに重要なのは、アマゾンは最高レベルの認可を与えられているうちの62%を有している点だ。これは通常、法執行システムのデータを扱うのに必要な認可である。

 

ある意味、アマゾンは単に時代の流れを利用しただけだともいえる。2010年、米国政府は「クラウド・ファースト」政策を立ち上げ、政府機関のデータとコンピューティング・リソースをクラウドへ移行し始めた。2014年には連邦情報技術取得改革法(FITARA)が可決され、政策は強化された。2014年1月、議会でFITARAが検討されていた最中、アマゾンやマイクロソフト、EMC(その後デルに買収される)はクラウド・コンピューティング・コーカス・アドバイザリー・グループ(Cloud Computing Caucus Advisory Group)というロビー団体を結成し、法案の可決を後押しした。ミエンティによれば、この3社による政治行動委員会(PAC:政治資金団体)はさらに、法案を提出した議員2人の選挙資金として25万ドル以上を直接献金したという。

付け加えるなら、国土安全保障省はマーク・シュワルツ最高情報責任者(CIO)のもとで、アマゾンのクラウド・サービスをいち早く採用した政府機関の1つだ。2017年、シュワルツCIOは国土安全保障省の下部組織の1つをAWSへ大規模移行した後、国土安全保障省を辞してAWSのエンタープライズ・ストラテジスト(企業戦略担当)に就任している。当時のシュワルツCIOとAWSとの関係について、MITテクノロジーレビューはシュワルツにインタビューを申し入れたが、AWSからの回答はなかった。

ICMの支援以外にも、AWSは国土安全保障省の他の大規模な移民関連データベースと業務を複数ホストしている。それには、米国市民権移民局(USCIS)の主要なデータ・システム、2億3000万人分の指紋や顔記録、眼球の虹彩といった生体データも含まれている。こうしたシステムやデータは、全米で実施されている移民取締りにますます大きな役割を果たしている。

アマゾンがこれらの契約によってどれだけの利益を得ているかといったデータは公式には入手できないが、国土安全保障省の全IT資産構成は68億ドルに上る。これは、2019年会計年度の国土安全保障省の予算支出の10%近くにあたる。AWSの広報担当者はノー・コメントと回答した。

アマゾンは現在、ほかにも米国防総省(DoD)のコンピューティング・インフラの刷新と、米軍のすべての作戦を1つのプラットホームに統合する100億ドルの契約に入札している。政府が利用するクラウド・プロバイダーとしてすでに多くのシェアを占めていることから、この契約もアマゾンが落札するだろうというのが大方の予想だ。

「免疫反応」

現在、アマゾンをはじめとする巨大テック企業に対し、テクノロジー開発と展開においてより高い倫理基準に従うように求める声が高まっている。つい先日、匿名のアマゾン社員が会社に対して、顔認識プラットホーム「レコグニション(Rekognition)」の法執行機関への販売をやめるように求める公開書簡を書き送った。

「新しく強力な監視ツールが何ら抑制されないまま国家機関の手に渡れば、何の罪もない人々がターゲットにされることは、過去の歴史から見ても明らかです」と匿名の社員は指摘した。「そのような差し迫った懸念を無視して、強力なテクノロジーを政府と法執行機関に配備してしまうことは、危険で無責任な行為です」。

一方10月22日、デイリー・ビースト紙はアマゾンの社員が今年6月、移民税関執行局にレコグニションを売ろうとしていたと伝えた。その他に、公開書簡の執筆者は、アマゾンにパランティアとの契約を打ち切るよう求める内部書簡に450人以上の社員が署名したことにも言及している。

グーグルとマイクロソフトの社員も同様に、それぞれの企業側へ対して、政府とともに論争の的になる取引に反対する声を上げている。内部からの激しい反発を受けて、グーグルは10月初め、米国防総省との100億ドルの契約入札を取りやめる決定を下した。数日後、マイクロソフトの社員も、同様の措置を企業側に求める公開書簡を送った。

アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は、少なくとも今のところは入札撤回要求に動じていない。先月開催されたワイアード25カンファレンスのステージ上で「当社は今後も米国防総省の支援を続ける方針です。私は、そうするべきだと考えています」とベゾスCEOは語った。「上級幹部の仕事の1つは、正しい決断を下すことです。それが不人気なものであったとしても、やらなければなりません」。

ベゾスCEOはさらに、アマゾンのテクノロジーが有害な方法で利用されようとしても、社会の「免疫反応」が働いて阻止するだろうと発言した。この発言は公民権運動家やアマゾンの社員から猛烈な批判を受けた。

「将来起こりうる害の懸念をしているのではありません」と匿名のアマゾン社員は公開書簡で書いている。「アマゾンは今現在、危険な監視社会のシステムを設計し、マーケティングし、販売しているのです」。

今のところ、(アマゾンの方針が)変化する兆候はまるで見られない。

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カーレン・ハオ [Karen Hao]米国版 AI担当記者
MITテクノロジーレビューの人工知能(AI)担当記者。特に、AIの倫理と社会的影響、社会貢献活動への応用といった領域についてカバーしています。AIに関する最新のニュースと研究内容を厳選して紹介する米国版ニュースレター「アルゴリズム(Algorithm)」の執筆も担当。グーグルX(Google X)からスピンアウトしたスタートアップ企業でのアプリケーション・エンジニア、クオーツ(Quartz)での記者/データ・サイエンティストの経験を経て、MITテクノロジーレビューに入社しました。
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