エネルギー

Capitalism Behaving Badly 資本主義の悪行

気候変動や所得不平等のような大きな問題を解決するための政策を形成し支援する上で、政府が果たす役割を再考しなければならない時だ。 by David Rotman2016.10.15

健全な企業収益、2008年の金融危機以来少しずつ回復している雇用率、シリコンバレーから流出してくるハイテク産業の明るいニュースにも関わらず、経済がどこか深い所で間違っているような痛みを感じる人も多い。生産性が伸び悩んでいるために、経済的機会も少ないままだ。アメリカ合衆国とヨーロッパでの高レベルの所得不平等は、国民の怒りをあおり、取り残された人々の欲求不満を掻き立てている。その結果が、前例のない怒りの政治だ。そして、あまりにも明白な状況にもかかわらず、経済学者や政策立案者は、原因の説明ができず、さらに重要な、問題の解決策も見つけられずにいる。

そこが、資本主義を再考する出発点だ。2001年にノーベル賞を受賞した経済学者であるコロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授、英国政治における発言力が高まっているサセックス大学のマリアナ・マッツカート教授(イノベーション経済学)らは、執筆した一連の論文の前書きの通り「現代の資本主義がいかに機能し、なぜ重要な点において、現在機能していないのかに関するより良い理解を」提供しようと試みている。そして、これらの論文は、非常な需要な議論を提供し、我々が経済問題に取り組む中で、より一貫性のある審議された戦略的計画を必要であり、特に温室効果ガスの排出量を削減するためのより効果的な方法を見つける戦略的計画が必要であることを論じている。

特に、マイケル・ジェイコブス(気候変動やエネルギー政策に関する評論家で、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの客員教授等を務める)と共同編集し、前書きを共著したマッツカート教授は、自由市場は必然的に望ましい成果につながる、そして自由市場が常に優れているという見方、市場の「神の見えざる手」が一番よく知っているという見方に対抗したいと考えている。つまり、マッツカート教授は、イノベーションに対する支援を含む政府の政策が市場を形作っていることを認めるべきだと主張する。

この発言自体はあまり論争にはならないが、マッツカート教授の議論の展開の仕方が物議を醸し出している。マッツカート教授が「経済成長と発展を支える原動力」と呼ぶイノベーションを促進するだけが政府の責任ではなく、国がその方向を設定する必要があり、特定の問題を解決するために、イノベーションの方向を政策によって主導する必要があり、その目的は、生産性の向上やグリーンエネルギーへの遷移を促すことでもあるだろう、というのだ。マッツカート教授は、イノベーションには「豊富な資金を持つ社会的な研究開発機関と強力な産業政策」の両方が必要だと書いている。

マッツカート教授がミッション指向の公共政策と呼ぶこともある産業政策には、長い対立の歴史がある。経済学者は非常に独特な方法で産業政策を定義する。政府が、目的を達成するために、イノベーションと成長を方向づける計画的な役割に着手したとき、というのだ。そのような政策の復活を求めることは、多くの政治家を何十年も支配してきた考えに対抗することになる。特に米国と英国では、政府はイノベーションを誘導するようなことは慎むべきだと考えられてきた。マッツカート教授は、政府が「従来の見解に沿った方法で均等な機会を与える」ような努力をするべきではないとも書いている。むしろ、「政府は社会全体で選択された目標の達成に向けて機会を傾ける支援ができる」のだ。

マッツカート教授は最近のインタビューで「政府がこれを実行するためには、全体の枠組みを変える必要があります」といった。政府が市場を作り出し形作っていくパートナーにならず、極端な状況で市場を「修正」するためだけに介入すべきであるという考え方では、常に問題に「絆創膏」を貼っているだけで、根本的なことは「何も変わらない」。現在の低成長と不平等の拡大を扱いにくくしているのは、米国および欧州において政府がますます自らの責任を回避していることが要因である、とマッツカート教授はいう。「政策がイノベーションと成長を操作していることは、認めざるを得ません。そして、問題は、どこに操作していくかということです」。

マッツカート教授のさらに論議を呼ぶ主張のひとつは、現在の最もよく知られているテクノロジーについて民間部門があまりに多くの功績をあげ、あまりにも多くの富を得ていることだ。iPhoneは、タッチスクリーン、Siri、GPS、インターネットを含むテクノロジーの進歩に依存している。そういったテクノロジーの進歩は、国の補助金を受けた研究ですべて開発されてきた、とマッツカート教授は主張する。そうかもしれない。明らかにマッツカート教授の議論が極端なこともある。たとえば、ナノテクノロジーは当初、政府のイニシアチブによって資金を供給し、民間部門が後から乗り込んできたという主張をとってみよう。実際には、主要な初期の発明は、IBMのチューリッヒ …

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