脳に電気信号を送るロボットアームで麻痺患者の触覚を取り戻せる
感覚皮質に触れることは感覚を取り戻す手段だ。 by Jamie Condliffe2016.10.17
ロボットアームから脳の感覚皮質に電気信号を送る新しい研究によって、麻痺患者の男性が触覚を取り戻せた。
脳に埋め込んだインプラントで信号を検知して義肢を動かしたり、電気信号で感覚を取り戻したりするアイデアは目新しくない。しかし、この研究は従来と異なり、感覚をつかさどる脳の一部である感覚皮質に情報を与え、脳内で触覚を直接刺激するのだ。
この研究の被験者であるネイサン・コープランドさんは首を損傷して手足を動かせなくなった。ザ・バージによると、コープランドさんの脳には合計4本の電極が埋め込まれており、2つはロボットアームを動かすために運動皮質に、残りの2つは感覚皮質に取り付けられた。
6カ月に及ぶ訓練期間中、ロボットアーム内のセンサーを電極に接続し、圧力を検知すると脳に電気信号を送るようにした。訓練の初期には意図的に電気信号を弱くしていたのでコープランドさんは何も感じなかった。しかし、時間の経過とともに信号を強くすると、コープランドは何かを感じ始めた。ピッツバーグ大学医療センターで撮影された映像でコープランドさん「指が何かに触れてるような、圧迫されているような感じがします」と語った。
義肢をつけた人が感覚を取り戻すのは、単に「感覚を取り戻す」以上の価値がある。洗濯物を干したり、紙を1枚取るといった繊細な動作に必要なフィードバックは感触から得るからだ。感触がなければ日々の雑用でさえ困難だ。
サイエンス・トランスレーショナル医療誌の結果をまとめると、今回の手法は「モノに触れたり動かしたりするために義手に必要な接触位置や圧力に関する情報を伝えるのに利用できる」と研究者は説明する。しかし、この手法が幅広く採用されるにはまだいくつかの課題がある。ロボットアームはまだコープランドさんに取り付けられていない(写真)のだ。また、すべてを整えるには多くの機器が必要だ。しかしこの研究は、義手を利用する人が、義手でより現実的な体験をする日がいつか訪れることを示している。
(関連記事:Science Translational Medicine, The Verge, “First Cyborg Olympics Will Celebrate How Technology Can Help Disabled People,” “Paralyzed Man’s Arm Wired to Receive Brain Signals,” “An Artificial Hand with Real Feeling”)
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クレジット | Image courtesy of DARPA |
- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。