KADOKAWA Technology Review
×
【4/24開催】生成AIで自動運転はどう変わるか?イベント参加受付中
AIチップ開発競争に新局面、光学チップに賭けるスタートアップ
Ms. Tech; Chip by Ben Davis, RO
ニュース Insider Online限定
Making AI algorithms crazy fast using chips powered by light

AIチップ開発競争に新局面、光学チップに賭けるスタートアップ

光を利用して計算を実行する光学チップの開発はこれまで失敗に終わってきたが、人工知能(AI)における深層学習の隆盛により成功を収める可能性が出てきた。光学チップは深層学習の中心となる行列乗算に適しているうえ、非線形的な性質を持つニューラル・ネットワークの計算にも秀でているからだ。 by Will Knight2018.12.18

ボストンの港湾地区にある小さな研究室。レーザーやレンズ、鏡、絡み合う配線が入り乱れる中、1つの小さなチップが人工知能(AI)の世界に大きな影響を与えようとしている。

ここは、まったく新しいAIアクセラレーター・チップを開発しているスタートアップ企業、ライトインテリジェンス(Lightelligence)の研究室だ。機械学習に必要な核となる数学的計算を実行するのには通常、電子が用いられるが、同社の試作デバイスには光が使われている。

理論的には、光の速さで情報を伝達することで、現時点で最高レベルのAIチップの数百倍の速度でAIアルゴリズムを実行できるはずだ。生のコンピューターのパワーが機械学習においてそれほどの違いを生み出すということは、アルゴリズムも圧倒的に強力かつ高性能になるということだ。ただし実際には、光学チップの速度はコンピューターのメモリのような従来の部品とのやり取りの速度によって決まってくる。ライトインテリジェンスは決められたセットアップの中で、できる限りの速度を出せるアルゴリズムを書く必要がある。

脳の神経細胞の構造に着想を得て考案された機械学習の一種である深層学習は、ここ数年、テック業界に旋風を巻き起こしている。深層学習は、画像の分類やテキストの翻訳といった重要なタスクを機械に学習させるための、非常に強力な方法であることが分かっている。企業は、深層学習をより効果的に活用しようとしのぎを削っているのだ。

深層学習の隆盛によって、核となる数学的計算に最適化された新チップの設計に関して、商業的にすでに大きな注目が集まっている。そして現在、コンピューティングに対しても、今までとは根本的に異なるアプローチが生み出されようとしている。

ライトインテリジェンスを訪れた私は、自信に満ち溢れた20代のCEO(最高経営責任者)であるイチェン・シェンに話を聞いた。フリースのセーターを着て、口を大きく横に広げる笑みが印象的なシェンCEOは、十数人ほどの従業員を一人ずつ紹介し、研究室を案内してくれた。

光はAIに大きな優位性をもたら …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る