KADOKAWA Technology Review
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MITとフェイスブックが挑む、40億人に「住所」を与える方法
Thor Alvis/Unsplash
Four billion people lack an address. Machine learning could change that.

MITとフェイスブックが挑む、40億人に「住所」を与える方法

75億人とも言われている世界人口のうち、約40億人が物理的な住所を持っていない。この状況を打開するために、テクノロジーを使って新しい住所の生成に挑む研究者たちがいる。 by Karen Hao2018.12.06

世界中の推計40億人の人々が物理的な住所を持っていない。物理的な住所がなければ、住民は宅配便や医療、災害救助などの重要なサービスの利用、投票のための住民登録や運転免許の取得といった術を失う。都市も、学校や水道、電線などの新たなインフラを計画するのに苦労する(そして、これは発展途上国だけの問題ではない)。

「グローバル経済への移行が進み、商品を注文して離れた場所に配達してもらう人々が増えるにつれて、『大聖堂の向かいにある赤いドアの家』といった説明よりもっと明確な住所が必要になります」。国際番地指定情報を提供する企業のメリー・ロー社長は話す。

MITメディアラボとフェイスブックの研究者は現在、機械学習を利用して、住所のない場所の住所を指定する新しい方法を提案している。

研究チームはまず、衛星画像から道路のピクセルを抽出するように深層学習アルゴリズムを訓練した。次に、別のアルゴリズムでピクセルをつなぎ合わせて道路網を作った。システムは道路の密度と形状を分析して、道路網を複数の区域に分割し、もっとも密度の高い集合体を街の中心と分類した。街の中心地域は北、南、東、西の四分円に分割され、道路の方向と中心からの距離に応じて道路に番号が振られ、文字が割り当てられた。

最終的な結果を、手動で通りがラベル付けされた、地図化されていない地域のランダムなサンプルと比較したところ、人口集中地域の80%以上に首尾よく住所が割り当てられた。グーグル・マップやオープンストリートマップ(OpenStreetMaps)と比較して対応範囲が改善されたという。

住所の作成を自動化する方法は、MITとフェイスブックの取り組み以外にもある。ワットスリーワーズ(what3words)という組織は、グローバル・グリッド(地球全体の表面を覆う碁盤目)上のすべての3×3メートルの正方形に対応する一意の3語の組み合わせを生成している。この方式はすでに南アフリカ、トルコ、モンゴルの地域で国営の宅配便サービス、地元の病院、地域の治安部隊によって採用されている。

とはいえ、フェイスブックの研究者で、MITメディアラボとフェイスブックで共同開発したシステムの作成者の1人であるイルケ・デミル博士が言うように、新しいシステムの主な利点は、既存の道路の地形に従っているため、住民が2つの住所同士の関係を理解しやすいことだ。

「たとえば、ワットスリーワーズの方法で自分の住所が『オウム・失敗・カジノ』、他の人の住所が『テーブル・椅子・テレビ』だった場合、その人が自分の隣人なのかどうか、まったく見当がつきません」と彼女は話す。「それが問題の核心です。私たちは人々が直観でとらえられる住所を作りたいのです」。

「それはとてもすばらしいと思います」と非営利組織グローバル・アドレス・データ・アソシエーション(Global Address Data Association)の創設者であるチャールズ・プレスコット国際弁護士はいう。「地域の慣習に基づいて住所を生成するようにシステムを開発できれば、きわめて効率的でコスト効率の高いシステムになるでしょう」。

だが、ロー社長もプレスコット弁護士も、この手法には限界があると指摘する。「住所の生成は主な問題ではありません。問題は人々にその住所を使ってもらうことです」(プレスコット弁護士)。

住所生成方式が受け入れられるかどうかには、多くの異なる要因が関係する。1つには、システムが国の文化と調和していなければならず、植民地支配的に強制されたシステムのような感じを与えてはならないことだとロー社長はいう。さらに、(住所には)住民の読み書き能力と強い相関関係がある。また、一部の地域では、簡単に見つけられたくないと住民が思うほど、政府に対する不信感が強いとプレスコット弁護士は付け加える。

フェイスブックとMITメディアラボの合同チームは、現在、非営利のパートナーと連携してシステムを実用化したいと考えている。プレスコット弁護士は個人として協力に意欲的で、「喜んで協力します」と話している。

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カーレン・ハオ [Karen Hao]米国版 AI担当記者
MITテクノロジーレビューの人工知能(AI)担当記者。特に、AIの倫理と社会的影響、社会貢献活動への応用といった領域についてカバーしています。AIに関する最新のニュースと研究内容を厳選して紹介する米国版ニュースレター「アルゴリズム(Algorithm)」の執筆も担当。グーグルX(Google X)からスピンアウトしたスタートアップ企業でのアプリケーション・エンジニア、クオーツ(Quartz)での記者/データ・サイエンティストの経験を経て、MITテクノロジーレビューに入社しました。
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