KADOKAWA Technology Review
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Searching Rat Brains for Clues on How to Make Smarter Machines

深層学習よりさらに高度な機械学習を実現するヒントはどこにあるのか?

米国政府の2800万ドルのプロジェクトでは、ネズミの脳を盗聴して人工知能(AI)研究に役立てようとしている by Tom Simonite2016.10.19

データセットの増大とコンピューターの高速化によって、近年、人工知能分野では進歩が相次ぎ、惜しみなく資金が投じられている。ハーバード大学のデビッド・コックス助教授によると、次の大きな飛躍は、ビデオゲームをプレイ中にラットの脳内で何が起こっているか理解することにかかっているという。

コックス助教授は、合衆国国家情報長官室(ODNI)が資金を提供する2800万ドルのプロジェクト「アリアドネ」を率いて、ソフトウェアをもっと賢くするために、哺乳類の脳内に手がかりを探している。「脳に入って、そこにどんな手がかりやトリックが隠されているかを見つける、月探査ロケットの打ち上げのようなとてつもない取り組みです」とコックス助教授は10月18日、MIT Technology Review主催のカンファレンスEmTech MIT 2016で話した。

With a little bit of added noise (lower right), a computer can be fooled into thinking that an image of MIT Technology Review's Editor-in-Chief Jason Pontin is in fact an ostrich.
わずかなノイズ(右下)を加えるだけで、コンピューターは騙され、MIT Technology Reviewのジェイソン・ポンティン編集長の画像をダチョウと判定してしまう

画像認識や翻訳などの分野でみられる最近の進歩は、神経科学から大まかなヒントを得た「深層学習」の手法を使いながら、計算機の処理能力が向上したおかげといってよい。しかしコックス助教授によると、音声認識の進歩や囲碁を習得できたにもかかわらず、深層学習はまだそれほど賢くはないという。

たとえば、深層学習ソフトウェアがそこにないものを見えてしまうように、写真を修正するのは簡単だ。コックスはMIT Technology Reviewの編集長の写真を画像認識ソフトウェアでダチョウに見えるよう、わずかに変更した写真を見せた。(コックス助教授の研究室のオンライン・デモでこのトリックを実際に体験できる)

深層学習ソフトウェアがある種の対象物を新たに認識するには、あくまでも、何千ものラベル付けされた例が必要になる、とコックス助教授はいう。人間の子どもが新たな対象物、たとえば新しい種類の道具を認識できるようになるには、1つの例があるだけでよい。

コックス助教授によれば、脳をもっと綿密に調べることが、この欠点に対処する最善の方法だという。「私たちの考えでは、脳は最初の大まかなヒント以上の何かをまだ与えてくれます」

「アリアドネ」プロジェクトは1月に始まったばかりだが、コックス助教授はすでにラットにビデオゲームをやらせて、視覚的認識能力を訓練している。研究者は新たに開発された顕微鏡で脳内細胞の活動を見て、ラットの神経細胞が世界をどのように解釈しているか、理解しようとしている。

「これは無数の脳内細胞上に盗聴器を設置するようなものです。ラットの思考を監視するのです。脳がどのように計算処理しているかについて、前例のない疑問を投げかけているのです」

プロジェクトの別の計画では、ラットの脳内の神経細胞のつながり方と構造を3Dで再構築するために、電子顕微鏡で処理された厚さ30ナノメーターの脳細胞切片が多数使われている。

出現する3Dモデルは極めて複雑だ。神経学者はさまざまな細胞の全てが何をしているのか、まだ知らない。しかしコックス助教授は、途方に暮れるほどの複雑さによって励まされるという。なぜならこれは脳が、人工知能を作り出す方法について、まだずっと多くのことを私たちに教えてくれることを意味するからだ。

「今まで考えられていた以上に、はるかに多くのことが起きている決定的な証拠のひとつです。これが理解できれば、深層学習システムを実際の脳にもっと近づけられると期待しています」

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MIT Technology Reviewのサンフランシスコ支局長。アルゴリズムやインターネット、人間とコンピューターのインタラクションまで、ポテトチップスを頬ばりながら楽しんでいます。主に取材するのはシリコンバレー発の新しい考え方で、巨大なテック企業でもスタートアップでも大学の研究でも、どこで生まれたかは関係ありません。イギリスの小さな古い町生まれで、ケンブリッジ大学を卒業後、インペリアルカレッジロンドンを経て、ニュー・サイエンティスト誌でテクノロジーニュースの執筆と編集に5年間関わたった後、アメリカの西海岸にたどり着きました。
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MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020SDGs Issue

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