KADOKAWA Technology Review
×
魚はなぜ高速で泳げるのか?3D数値流体力学で長年の謎を解明
ニュース Insider Online限定
We finally know how fish swim so fast

魚はなぜ高速で泳げるのか?3D数値流体力学で長年の謎を解明

50年以上もの間、魚類が推進力を得る方法を説明する2つの理論の正当性が物理学者らの間で議論されてきた。北京計算科学研究センターの研究者らが、数値流体力学モデルを使ったコンピューター・シミュレーションでその問いに答えを出した。 by Emerging Technology from the arXiv2019.05.07

魚のように泳ぎたいというのは人間の夢だ。魚は優雅な高速遊泳をいとも簡単にやってのける。人間は未だに水泳で時速6キロメートルを達成できていないが、世界最速の魚は最高時速110キロメートルで泳ぐ。最速の潜水艦でさえ最高速度は時速80キロメートルに過ぎない。

魚がどのようにこの離れ業をやってのけるのかは謎に包まれている。魚の動作に特徴的なうねりと、そのうねりの動作が生み出す流体力学の力は、長い間、物理学者や生物学者、技術者らの頭を悩ませてきた。実は、この謎を解き明かす流体力学的推進力の学説が2つ存在する。1950年代と1960年代の古い学説だ。しかし、どちらの説が正しいのかは未だに解明されていない。

この未解明の問題に、中国の北京計算科学研究センターの大学院生であるチンユー・ミンらのチームが新たな見解を示した。ミンらの研究チームは魚が推進する様子をスーパーコンピューターを使ってモデル化し、生きた魚の動きから得た詳細な測定データを使ってモデルから導き出した結果を調整した。その結果、魚がどのように推進力を生み出すのか、さらに、腱などの特定の解剖学的構造が非常に重要な役割を果たす理由が初めて説明された。

まず、魚の遊泳と推進力について簡単に説明する。魚に特徴的なうねるような遊泳動作では、筋肉が体に沿って連続的に収縮しながら曲がった体の逆方向へ進む波を作り出す。この逆方向へ進む波が水を押し、推進力を生み出す。

しかし、どのようにして推進力が生み出されるのかは正確には分かっていない。1952年に英国の物理学者ジェフリー・テイラーは、魚の体の各部位と水の相互作用に着目した。体の各部位が動きに対する抵抗となる抗力を生み出すというのがテイラーの説だ。魚の体のある部位がうねると、体に平行な方向よりも垂直方向に大きな抗力が生まれる。結果とし …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
  2. Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る