
米中問題を「冷戦」と片付けるのは時代遅れだ
米中の対立を「冷戦」という言葉で表すのは、時代遅れであるだけでなく有害でもある。米ソ対立の時代と違い、サプライチェーンで密接につながった2大国関係は、そう簡単に割り切れるものではないからだ。 by Graham Webster2019.01.17
ニューヨーク・タイムズ紙はここ数カ月間、「冷戦は世界でもっとも高度な産業間で繰り広げられている」ものであり、私たちは「新しい経済冷戦の始まり」を目にしていて、中国の台頭がいわゆる「新しい冷戦」に油を注いでいると報じた。2017年秋に掲載されたワイアードの特集は「私たちを脅かす人工知能(AI)冷戦」と警告している。
このたとえには、分かりやすい響きがある。冷戦という言葉は互いに対峙し、覇権を争う2大国の姿を想像させるからだ。問題は、今日のテクノロジー分野での競争を冷戦になぞらえることは、米国と中国間の相互依存関係を度外視しており、政策立案者が最悪の事態を考えることを助長するということだ。
では、なぜ私たちはこの言葉をよく目にするのだろうか。その理由はおそらく、実際に何が起きているかを説明するのが非常に難しいときに、便利な言葉として「冷戦」が使われるからだ。実際に起きているのは、深く結びついたテクノロジー環境において、観念的で地政学的な緊張が広がっているということである。
米国とソ連の関係とは違 …
- 人気の記事ランキング
-
- Inside the race to find GPS alternatives GPSに代わる選択肢を、 地球低軌道で100倍強い 次世代測位システム
- Promotion MITTR Emerging Technology Nite #33 バイブコーディングって何だ? 7/30イベント開催のお知らせ
- Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2025 「Innovators Under 35 Japan」2025年度候補者募集のお知らせ
- Trajectory of U35 Innovators: Yoichi Ochiai 落合陽一:「デジタルネイチャー」の表現者が万博に込めた思い
- Cybersecurity’s global alarm system is breaking down 脆弱性データベースの危機、 「米国頼み」の脆弱性が露呈
- Why the US and Europe could lose the race for fusion energy 核融合でも中国が優位に、西側に残された3つの勝機