KADOKAWA Technology Review
×
AT&T Is Selling Law Enforcement Access to Its Customers’ Data

AT&T、捜査機関のデータ提出要求に有償対応

AT&Tが顧客メタデータを取得するツールの使用料を捜査員に請求することを示す内部文書が暴露された。 by Michael Reilly2016.10.26

AT&Tは最近動きが活発な企業だ。米国で2番目に大きい携帯電話網と、米国内の固定電話網の多くを所有し、850億ドルでタイム・ワーナーを落札した。そうそう、連邦捜査員や警察がAT&Tの顧客の電話履歴や、チャット、テキスト、位置情報、その他のデータを取得できるプログラムの使用料に年間何百万ドルも請求している。

火曜日のデイリー・ビースト紙に発表された記事は、やや驚く内容で、AT&Tの詳細不明のプログラム「へミスフィア(Hemisphere)」に新たな光を当てている。もともとへミスフィアは、ニューヨーク・タイムズ紙が、AT&Tと麻薬取締局が「組んで」、麻薬犯罪を捜査するために同社が記録した顧客データを利用している証拠を見つけた2013年頃から取りざたされるようになった。

しかし、新しい報道によると、へミスフィアはパートナーシップの名称ではなく、製品なのだ。AT&Tは、顧客がAT&Tのネットワークでやりとりするほとんどあらゆる形態の通信に関するメタデータ(通話主の契約情報や位置など)を条件抽出したり、捜査員が一見気づけないパターンを引き出したりできる、データマイニングサービスを作り上げたのだ。デイリー・ビースト紙の記事は、以下のように説明している。

データベースによって、アナリストは詳細な電話履歴の発信者と受信者の相互に隠されているパターンや接続を検出でき、へミスフィアで監視対象の人の関連性や動きについてかなり正確に推測できる。AT&Tのデータベースは、複数の使い捨て電話番号間で加入者(麻薬の売人が、従来型の監視を逃れるために、立て続けにプリペイドの「使い捨て」電話を使う)を追跡するのに特に有用だ。

それで何が分かるのか?AT&Tは、相談を持ちかけてきた捜査機関等にへミスフィアの利用料を請求し、年間数百万ドルを稼いでいる。料金は、捜査機関が直接支払うのではなく、連邦助成金プログラム経由で払われることが多い。つまり、消費者の税金が、AT&Tの営利目的型監視プログラムの支払いに使われているのだ。

AT&Tにへミスフィアに関してコメントを求めたが、広報担当者は、同社は、連邦法に基づく要請がある時のみに情報を開示する、と主張した。しかし、AT&Tは、ベライゾンやスプリントなど、ライバルの通信事業者よりもかなり長期にわたって顧客データを持ち続ける(米国国家情報局(NSA)の膨大な収集プログラムの下で蓄積されたデータ量より多い、秘蔵のメタデータを持っていると考えられている)ばかりでなく、AT&Tが協力する機関に、可能な限り「へミスフィア」プログラムの存在を隠すよう要求している。

AT&Tが顧客データの提出要求に応じる秘密の仕事を、相当なビジネスに変えていたと社会全体が知れば、どれほど印象が悪くなるのか同社はわかっていたはずだ。

(関連記事:Daily Beast, “How Do We Stop Our Social Feeds from Being Spied On?,” “As It Searches for Suspects, the FBI May Be Looking at You,” “What If Apple Is Wrong?”)

人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
タグ
クレジット Photograph by Kena Betancur | Getty
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る