逆風の原発
それでも次世代原子炉が
求められる理由
地球温暖化の主要な原因の一つである化石燃料による発電は、一向に減少する兆しを見せない。そうした状況を受けて、小型モジュール炉(SMR)や先進的な核分裂炉など新世代の原子力プロジェクトに対する期待が高まりつつある。しかし、技術面、コスト面をはじめ、一般市民の理解など、課題は依然として多い。 by Leigh Phillips2019.03.05
英国石油会社のBPは、環境関連のニュースを探すときに最初に頼るべき情報源ではないかもしれないが、BPの年次エネルギーレビューは気候専門家によって高く評価されている。BPの2018年のメッセージは厳しいものだった。地球温暖化に対する懸念をよそに、石炭は2017年に世界の電力の38%をまかなっていた。これは、20年前に最初の地球温暖化防止条約が調印されたときとまったく同じレベルだ。さらに悪いことに、温室効果ガスの排出量は昨年2.7%増加し、過去7年で最大の増加幅を記録した。
このような低迷を目の当たりにして、多くの政策立案者と環境保護団体は、より多くの核エネルギーが必要という結論に導かれた。以前は原子力発電に乗り気でなかった国連の研究者さえも、地球の気温上昇を1.5°C未満に抑えるすべての計画が核エネルギーの大幅な増加に依存することになるだろうと言い出している。
だが、私たちはそれと別の方向へ向かっている。ドイツはすべての原子力発電所を2022年までに閉鎖する予定だ。イタリアは2011年に、すべての将来の原子力発電プロジェクトを中止することを国民投票で決定した。それに、たとえ原子力発電が幅広い世論の支持を得たとしても(実際には得ていないが)、原子力発電には費用がかかる。米国のいくつかの原子力発電所は、安価なシェールガスに太刀打ちできないため、最近閉鎖された。
従来は原子力発電に懐疑的だった「憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)」は、「現在の状況が続けば、より多くの原子力発電所が閉鎖され、主に天然ガスに取って代わられて、二酸化炭素排出量の増加を招く可能性が高い」と2018年に主張している。すべての原子力発電所が閉鎖されれば、二酸化炭素排出量は6%増加すると推定されている。
憂慮する科学者同盟で原子力安全性プロジェクトのディレクター代行を務めるエドウィン・ライマン博士は、現時点で重要な議論は既存のシステムを支持するかどうかではないという。「より実際的な問題は、必要とされるペースで、新しい原子力発電所を数十年以内に設置することに現実味があるかどうかです」
シンクタンクのサード・ウェイ(Third Way)によると、北米だけでも、2018年初頭には75件の個別の先進的な核分裂炉プロジェクトがその問題に答えようと試みていた。これらのプロジェクトでは、数十年間使用されている従来の原子炉で利用されている核反応と同じ種類の核反応、つまり原子の分裂である核分裂を利用する。
先端テクノロジーの1つは小型モジュール炉(SMR)だ。SMRは従来の核分裂システムの小規模版で、より安価で安全になると見込まれているだ。オレゴン州ポートランドに本拠地を置くニュースケール・パワー(NuScale Power)は、設置を間近に控える60メガワットの小型モジュール炉を保有している(コストの高い典型的な従来の核分裂発電所は、およそ1000メガワットの電力生産能力を持っている)。
ニュースケールは、12基の小型炉を設置する契約を締結しており、アメリカ西部一帯の46社の電気事業者から成る連合にエネルギーを供給することになっている。しかし、連合の加 …
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