グーグルは2017年、機械学習の新たなアプローチに関するブログ記事をひっそりと公開した。データを1カ所に集約する必要がある標準的な機械学習の手法とは異なり、新手法は複数のデバイスに分散した一連のデータ・ソースによる学習ができる。この発明によりグーグルは、アンドロイド・ユーザーが送受信するすべてのメッセージを実際に読んだり携帯電話から削除したりすることなしに、入力予測モデルを訓練できるようになったのだ。
「協調機械学習(Federated Learning)」と呼ばれるこの手法は、その巧みさにもかかわらず当時の人工知能(AI)コミュニティではあまり注目されなかった。しかしまったく新しい領域での適用方法が見つかったいま、流れは変わろうとしている。プライバシーを第一に優先する協調機械学習は、現在の保健医療界においてAIを導入する上で最大の障害となっていた問題に最適解を与えるものになり得るのだ。
「患者データのプライバシーと、そのデータが持つ社会に対する有用性の間には、誤った二分法があります」。マサチューセッツ工科大学(MIT)で保健医療におけるAIを専門に研究しているラメシュ・ラスカー准教授(コンピューター科学)はこう話す。「人々は状況が変わりつつあることに気づいていません。実際のところ、現在ではプライバシーを確保しながらデータを活用できるようになっています」。
この10年、深層学習の劇的な興隆はさまざまな産業にすばらしい変革を起こした。自動運転自動車の開発を後押しし、デバイスと私たちの関わり方を根本から変え、サイバーセキュリティへの新たなアプローチを生み出した。しかし保健医療分野においては、多くの研究が病気の発見や診断に関してその有効性を示しているにもかかわらず、実際の患者を対象とした深層学習の活用はじれったいほどに遅れている。
現在の最先端のアルゴリズムは、学習のために大量のデータを必要とする。そして大半の場合、データは多ければ多いほど良い。病院と研究機関が大規模かつ多様性を持っ …
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