既存インフラ停止なしに
パリ協定は達成できない
二酸化炭素の排出源となる既存インフラの排出量だけで、気候変動に関するパリ協定の努力目標をすでに上回ることが判明した。再生可能エネルギーの増産だけでは追いつかず、既存インフラの早期稼働停止や大規模な改良が必要だ。 by James Temple2019.07.04
2010年、科学者たちは、二酸化炭素を排出する既存のインフラだけで、地球の平均気温が1.3℃上昇することが見込まれると警鐘を鳴らす論文を発表し、 「代替エネルギー開発のために特別な取り組みをしない限り、化石燃料システムは拡張し続けるだろう」と強調した。
ところが、そうではなかった。
その論文の続編が、 7月1日にネイチャー(Nature)誌で発表された。研究者たちは、既存の発電所、工場、車両、あるいは家庭製品だけでも、パリ協定で合意した努力目標である1.5℃をはるかに超える平均気温上昇への道を進んでいる可能性が高いという。さらに、これらの既存のエネルギーシステムを構成している施設や設備がこれまでと同様の期間稼働し、新たに建設が予定されている発電所が稼働した場合、世界の気温を2℃上昇させるのに必要な二酸化炭素量の3分の2が排出されることになるとしている。
1℃にも満たない温度差でどうしてこれほど騒ぐのかと思うかもしれない。しかし、1.5℃の温暖化が起これば、地球上の14%の人々が猛暑の影響を受け、北極圏では約500万平方キロメートル)におよぶ永久凍土が解凍し、世界の7割以上のサンゴ礁が破壊される。2℃の平均気温上昇ともなれば、猛暑の影響を受ける人々の数は3倍近くに跳ね上がり、さらに4割近くも大きな面積の永久凍土が解凍して、サンゴ礁は全滅し、他にも壊滅的な影響が出るという研究結果が発表されている。
ここにおける基本的な結論は、ある意味衝撃的だ。なぜなら、人類はすでに、科学者たちがこれまで何十年にもわたって警鐘を鳴らしてきたにもかかわらず、地球を危険に晒すのに十分なシステムをすでに構築してしまった。つまり、多くの再生可能エネルギーを構 …
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