「ペイ・フォワード」は自分に返ってくるか?中国のお年玉で検証
他人に良いことをすれば、やがては自分によい報いが返ってくるのだろうか? マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らが、中国のSNSであるウィチャットでの3600万件におよぶ「お年玉(紅包)」のやり取りから、恩送りの行為が連鎖するかどうかを調べた。 by Emerging Technology from the arXiv2019.07.19
中国の大手Web 企業のウィチャット(WeChat)は2014年に、変わったアプリの提供を開始した。「Red Packet(レッドパケット)」と呼ばれるこのアプリを使えば、ユーザーは友人たちや連絡先のグループにお金を寄付できる。友人や親戚にお金を贈る中国の「紅包(ホンバオ、日本の「お年玉」に相当)」という習慣に基づくアイデアだ。
だが、このアプリには、ちょっとした趣向が凝らされている。ウィチャットはそのお金を受取先の人々に平等に分配するのではなく、無作為に分けて配るのだ。配り終えると、受取先の各人が受け取る金額が全員に知らされ、最も多い金額を受け取った人物が「最も幸運な受取人」という栄誉を受ける。
この仕組みにより、珍しい研究をすることが可能になった。受取人らは、賞金の一部を他の人々に送ることで自分の幸運を分かち合う、いわゆる「恩送り(ペイ・フォワード)」をすることが多い。 しかし、恩送りという行為がいかにして発生し、人々がどのように反応するのかについてはほとんどわかっていない。たとえば、受け取り金額が多かった人は、より大きな金額の恩送りをするのかといったことだ。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の博士課程生であるユアン・ユアンとその同僚が、その問題に取り組んだ。恩送りに関する初の大規模な調査を実施するために、ウィチャットのレッドパケット・アプリを使用した3400万人のオンライン上の行動を研究したのだ。ユアンらの研究は、社会に奥深い意味をもたらす可能性のある向社会的な行動に関するユニークな識見をもたらした。「ウィチャットが提供する無作為な仕組みにより、今回の自然な実験が可能になりました」とユアンらは述べている。
恩送りは、人類の間で進化した広範な協調行動の1つである。協調行動の起源は、長年にわたっ …
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