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地球のためにベジタリアンに移行しなくてもいい=新分析で明らかに
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Giving up just half your hamburgers can really help the climate

地球のためにベジタリアンに移行しなくてもいい=新分析で明らかに

牛肉の生産では大量の温室効果ガスが排出される。だが、完全なベジタリアンに移行しなくても、食生活の部分的な見直しで大きな違いが出ることが分かった。 by James Temple2019.08.15

食生活を劇的に変えなくても、気候へ影響を大幅に削減できることが最新の分析で明らかになった。

7月に非営利団体の世界資源研究所(WRI)が中心となって実施した分析によると、米国民の平均的な食事における赤身の肉(特に牛、ヤギ、羊)の消費を半分に減らすことと、完全にベジタリアンに移行することでは、温室効果ガス排出量削減の点では大きな違いがないことが分かった。

こうした収穫逓減が見られるのは、標準的なベジタリアンが肉をすべて野菜に置き換えるわけではないからだ。「代わりに、乳製品や卵、その他の動物由来製品に大きく依存しています。これらは生産には大規模な土地が必要とされ、温室効果ガスを大量に排出します」。今回の報告書の筆頭著者であるWRIのティム・サーチンジャー上席研究員はこう説明する(完全菜食主義であるビーガンならさらに大幅な排出削減になるが、今回の報告書にはその分析は含まれていない)。

気候への懸念から食事を見直したいが、ステーキやハンバーガーを完全に断つのは難しいという人にとって、これは良いニュースだ。事実、肉の消費を減らさなくても、米国家庭の温室効果ガス排出量の15%を占める、食事による環境負荷を大幅に減らせるのだ。消費する赤身肉の43%を豚肉や鶏肉に代えるだけで、排出量を約18%削減できる。

8月8日、国連はこのような選択肢について熟考することがなぜ重要であるかを示した厳しい通知を発表した。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書「気候変動と土地(Climate Change and Land)」では、世界は地球温暖化抑止、および危機的状況が高まりつつある地球において増加を続ける人口に対する食糧確保のために、食糧生産および土地管理の方法を一新する必要があると結論付けている。

今回の報告書は、農業、林業その他の土地利用の変化が、世界全体の温室効果ガス排出量の23%を占めていると指摘している。食事の変化はすぐに大きな変化を生む可能性がある。世界規模で「牛肉のように温室効果ガス排出量の大きい食品」から脱却することで、年間の温室効果ガス排出量を7億~80億トン削減できる可能性がある。この予測の最大値(実質的にすべての人類がビーガンになる)が実現した場合、削減量は化石燃料関連の温室効果ガス排出量の約5分の1に相当する。報告書によると、こうした食生活の変化により、数百万平方キロメートルの土地が新たに …

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