KADOKAWA Technology Review
×
「ワインの涙」現象はなぜ起こる?衝撃波による新理論
Bertrand Bouche | Unsplash
人間とテクノロジー Insider Online限定
Ever wondered why your wine is weeping? Blame shock waves.

「ワインの涙」現象はなぜ起こる?衝撃波による新理論

グラスの内側をワインの雫が滴り落ちる神秘現象「ワインの涙」は多くの科学者の関心を惹き付けてきた。カリフォルニア大学の研究チームは、ワインの涙は衝撃波によって作られるとの仮説を発表した。 by Emerging Technology from the arXiv2019.10.24

ワイングラスの底をじっと見つめることがある読者にはおなじみの、神秘的な現象がある。ワインは、グラス内側の表面を上昇したあと、涙のように滴り落ちることがあるのだ。何百年も前から観測されてきた、いわゆる「ワインの涙」と呼ばれるこの現象は、どのようにして起こるのだろうか?

2019年9月、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のヨナタン・ダクラー特別研究員の研究チームは、「ワインの涙」の謎の一部を解明した。ダクラーの研究チームは、献身的かつ熱心にこの現象を研究し、答えを見つけたという。

「ワインの涙」を見るには、まず、アルコール度数の高いワインをマルティーニグラスに少量注いでみよう。そして、ワインの液面から薄層がグラス内側の表面を上昇していく様子を観察しよう。

物理学の偉人の中にも「ワインの涙」に興味を持った人は当然多かったので、この現象は詳しく解明されている。米国人科学者のウィラード・ギブズは、1875年に「ワインの涙」を完全に説明する理論を発表した。

ギブズの理論の一部は、ケルヴィン卿の兄、ジェームズ・トムソンによる20年前の研究に基づいていた。トムソンは、ワインは水とエタノールの混合物であり、水の表面張力がエタノールよりも大きいために「ワインの涙」現象が生じることを発見した。

ワインは最初、毛細管現象によってグラス内側の表面を上昇する。毛細管現象は、表面張力によって液面がガラス容器の垂直な壁面に押し上げられるときに発生する。

ワイングラスでは、グラスの壁面に押し上げられたワインの薄層はすぐに蒸発し始める。アルコールは水よりも速く蒸発するので薄層のアルコール度数は低くなり、水の濃度が高くなる。その結果、薄層の表面張力は、グラス内のワインよりも高くなる。

薄層とワインの表面 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る