軍事力による抑止は時代遅れ
元空挺兵の国防大教授が語る
「戦争の新しいルール」
空母や戦闘機のような従来型の兵器に多額の予算を投じるのは誤りだ——。元空挺兵でもある国防大学の教授は「戦争の新しいルール」を説く。 by Janine di Giovanni2019.11.20
ショーン・マクフェイト博士は米国陸軍第82空挺師団の元空挺兵だ。西アフリカで民間軍事請負業者として働いた経験もある。現在は、国防大学とジョージタウン大学で教授(外交)を務めている。
今年1月に出版された著作『The New Rules of War』(未邦訳)では、米国が成功するために変えなければならない戦争の方法について詳細に分析している。戦場記者のジャニーン・ディ・ジョヴァンニが、マクフェイト博士の紛争の未来に関するビジョンについてインタビューした。
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——著書で何を訴えているのですか? どのような思いを伝えようとしているのですか?
私がこの本を書いたのは、怒っていたからです。イラクとアフガニスタンで良き友人たちを亡くしました。納税者として言わせてもらえば、6兆ドルをトイレに流してしまったのです。そして1人の退役軍人として、我が国のイメージが傷つくのを見るのは辛いことです。それでも、世界最高の軍隊があります。敵でさえそのことは知っています。では何が問題なのでしょう?
問題は軍ではありません。素晴らしい軍隊がありますが、問題は戦略IQが低いことです。戦争は戦術や実行のレベルではなく、戦略レベルで勝ち負けが決まります。それでは、勝つための戦略的思考を鍛える訓練はどこですればいいのでしょうか? そのような機関が不足しているのです。軍の大学校は瀕死の状態で、民間の大学では一般的にそのようなことは教えていません。
運が良いだけで、賢いわけではありません。
——それはどういう意味ですか?
なぜフォード級航空母艦やF35戦闘機のようなものを、追加で購入しているのでしょうか? そうしたものは削減すべきです。そのような高価な従来型の兵器は削減し、現代戦においてより効果的なものを強化します。それは政治戦略や、戦略的影響力、法律を武器とした戦争、軍事力と経済力、諜報活動といったことです。ロシアによるバルト海の侵略を足止めしたい? それなら力の誇示という手段は忘れましょう。軍事力による抑止は時代遅れです。代わりに、国境で「色の革命(米国主導の政権交代)」を始めます。疑い深いロシア政府はそれを阻止するためにリソースをシフトするでしょう。中国を南シナ海から追い払いたい? それなら、あの地域に空母艦隊を送り込むのはやめましょう。代わりに、ウイグル自治区の反乱を秘密裡に支援します。中国政府は国内における政権安定に気を取られるはずです。
国際情報化時代において、もはや軍が敵を殺害することで問題を切り抜けられません。それが戦争を影の戦いへと向かわせています。現在では、火力よりも「もっともらしい否認(明白に関係があるのに証拠がないため否認すること …
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