KADOKAWA Technology Review
×
新型コロナショック、
大統領選「郵便投票」で
民主主義は守れるか?
Nadya Peek on Flickr, Attribution 2.0 Generic (CC BY 2.0)
カルチャー 無料会員限定
Vote-by-mail is the best way to save the 2020 election from coronavirus

新型コロナショック、
大統領選「郵便投票」で
民主主義は守れるか?

新型コロナウィルスの世界的な流行の最中にもかかわらず、11月の米大統領選挙の期日は迫ってきてる。民主主義を守るためにいま何が必要か? by Lee Drutman2020.04.01

これまでに分かったことは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、生活のあらゆる面に強烈な影響を与え、人々が集まるあらゆる活動を健康上のリスクに変えていることだ。11月にまだ新型コロナウイルスの影響が残っているとしたら(ほぼ確実だろう)、重要な大統領選も危険にさらされることになる。選挙当日の投票所には、何千人もの市民が訪れ、長蛇の列を作る。どうしたら安全に選挙の運営ができるだろうか? 端的にいえば、それは不可能だ。

では、どうすればよいのか?

明確な「プランB」があることがせめてもの救いだ。それは、郵便による投票である。いくつかの州では、すでにかなりの実績がある。コロラド州、オレゴン州、そしてワシントン州の投票のほとんどは現在では不在者投票が占めている(日本版注:米国の不在者投票は投票用紙が自宅に郵送され、郵送で返送する)。また、選挙の行方を左右する重要なスイング・ステート(民主党、共和党の支持が拮抗している州)のフロリダ州を含むいくつかの州が、郵送による投票を増やすことに向けて着実に動いている。現在では 34の州ですべての有権者が自宅に居ながら投票でき、投票者全体の約20%が郵送で投票している(郵便を利用した「不在者」投票は南北戦争にまでさかのぼり、海外に駐留する兵士たちに長い間使われてきた。しかし、州が郵便および投票所での投票の両方で、特別な理由なく広く期日前投票の促進をしているのは20年前からだ)。

一方で悪い知らせもある。郵便投票を実施するとしても、すべての州において(有権者が)署名をして、封印して送付する(投票用紙の処理の)準備ができていないということだ。テキサス州やニューハンプシャー州のような非常に大きな、あるいは非常に重要な州を含む州では、郵便投票の処理経験があまり無い。新型コロナウイルスによって郵便による投票を余儀なくされた場合、それらの州は数カ月の間に処理経験の無さをカバーする必要がある。これに加えて、不正投票や外国からの選挙への不正介入の申し立てに関係なく、広範で長年にわたる選挙に対する不信感、投票ルールに関する党派間の争い、選挙は接戦になるだろうという見込みなどが組み合わされると、新しい投票制度を導入するのはこの上なく困難だ。

だが、プランCは存在しない。11月の選挙は予定通り実施しなければならない。2回の世界大戦、1回の内戦、そして1918年のインフルエンザ流行の最中でさえも、選挙は実施された。我々は以前にも例外的な状況をくぐり抜けてきた。安定性が最も必要とされるいま、この規範を破ることになれば、恣意的な独裁主義に陥りかねない。米国の民主主義が終わってしま …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る