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デジタル・ドル導入案、パンデミックのどさくさで急浮上
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We just glimpsed how a “digital dollar” might work, thanks to coronavirus

デジタル・ドル導入案、パンデミックのどさくさで急浮上

景気刺激策として決まった最大1200ドルの給付金を配る手段として、デジタル・ドルの発行が急浮上。最終法案では見送られたものの、これを機に導入の議論が深まりそうだ。 by Mike Orcutt2020.04.03

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに端を発する混乱と不安の中、少なくとも1つのことが明らかになった。有力な政策立案者数名が、米連邦準備制度理事会(FRB)は「デジタル・ドル」を発行すべき、との意見を真剣に検討しているというのだ。

デジタル・ドルはパンデミックとどう関係しているのだろうか? パンデミックの影響で休業や廃業に追い込まれた多くの人々は、失われた収入を埋め合わせるためにすぐにでも現金を手にする必要がある。3月27日に連邦議会で成立した景気刺激法によって、給付資格を持つ米国人は政府から最大1200ドルの現金が給付される。

最終的には、給付金は既存の方法、すなわち銀行口座への振り込みや郵送による小切手などで支給されることが決まった。だが、議論のある時点では、野党・米民主党の有力議員らが、デジタル・ドルを使ったまったく新しい政府運営の決済プラットフォームの創設を支持していたようだ。

提案されたシステムは、最終的な法案には採択されなかったものの、デジタル・ドルの実現にこれまで以上に近づいたようだ。パンデミックに端を発した危機的状況は、議論の重要な転換点となる可能性がある。

ある意味で、ドルはすでにデジタル化されている。銀行口座の通帳に記載される数字はドルを表しているし、クレジットカードを使えばドルの支払いが可能だ。だが、銀行口座の数字は、銀行が私たちから借りている債権だ。本物のデジタル・ドルは、米国政府が私たちに借りている債権になる。また、それこそが現金そのものを意味する。ほとんどの国では、政府の借用証書(IOU)は、商業銀行の借用証書よりもリスクが低い。特にパニック時にはそうだ。だからタンス預金には人気があるのだ。

しかし、「デジタル人民元」を発行する寸前と見られる中国を除けば、中央銀行によるデジタル通貨(Central Bank Digital Currency:CBDC)はほとんどの国で具体的に検討されていない。米国もそうだ。FRB当局者は、デジタル・ドルを発行する計画はないと繰り返し述べてきた。だが、いまとなっては、現実味がやや増してきているようだ。

そのもっとも有力な証拠は、民主党に所属する下院議員らが提出した、経済措置計画の初期草案のある一節だ。議会を …

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