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ビジネスリーダーのための
「職場再開」計画立案ガイド
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The CEO’s guide to safely reopening the workplace

ビジネスリーダーのための
「職場再開」計画立案ガイド

自宅待機令が解除されて経済が再開したとしても、職場を新型コロナウイルス感染拡大の場にしないために、ビジネスリーダーはさまざまな対策を採る必要がある。シンプルで強力なプラン作成の枠組みを紹介しよう。 by Joshua Gans2020.06.01

おそらく各国での経済活動再開が持つ唯一最大の意味は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック対策の有形無形の責任が行政から民間に移行することだ。フォーチュン500(Fortune 500 )企業の最高経営責任者(CEO)から小規模企業のオーナーまで、経営者はまもなくさまざまな意思決定を下すことになる。決定内容次第で事業の運営状態に加え、関係者(従業員、契約業者、顧客、サプライヤー)の健康が左右され、さらには関係者の家族、友人、近隣住民の健康も左右される。影響の大きい意思決定となるが、ビジネスリーダーは自宅待機期間明けの回復期の事業運営プランをどう立てるべきだろうか。

本稿ではシンプルで強力なプラン作成の枠組みを紹介する。

現在の危機は健康上の問題によるものだ。新型コロナウイルス感染症に有効な治療法もワクチンもまだない。治療法やワクチンが存在しないことについて、企業のマネージャーにできることはほとんどない。だが、問題が解決されるまでは、職場が感染拡大の場となる可能性があるため、健康管理上の課題が発生し、その解決策が必要となる。それはマネージャーの仕事だ。

その課題とは、職場での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の拡散が今も現実的な脅威であると仮定して、事業を再開するべきかどうか、再開するなら具体的にはどうするかをいかに判断するかである。健康管理上の課題の原因は情報不足にある。つまり、誰が新型コロナウイルスを持っているか(感染力がある)、誰が新型コロナウイルスを克服したか(免疫があるか)、未感染者か(感染しやすいか)がわからないことが問題なのだ。必要な情報が揃っていたなら、経済危機は起こらないはずだ。感染力のある人を検疫しさえすれば、健康な大多数の人は普段どおりの日常生活を送れる。言い換えれば、感染リスクを明確にする情報がないせいで多額の費用が発生している。ある推計によると、その費用額は世界中で月間3750億ドルだ。個々人の感染状況の情報がない以上、経済復興を始めるには、前述の管理課題を解決しなくてはならない。

管理課題を解決するには2種類の方法がある。1つ目は情報に基づくソリューションである。すなわち、感染力、免疫のある個人をそれぞれ予測し、この情報を用いて職場に立ち入る人を決定する。2つ目は、感染力、免疫のある個人を完璧には予測できないことを見越した、常時実行ソリューションである。このソリューションは、感染力のある人が立ち入ったとき、新型コロナウイルスの拡散を制限するテクノロジーとプロセスで構成される。ロックダウンは最も極端な常時実行ソリューションだ。再開にはもっと細やかな制限が必要となる。

情報に基づくソリューション

感染している可能性が高い個人に関する情報を収集する方法はいろいろある。一番分かりやすいのが、鼻咽頭スワブなどによる新型コロナウイルス感染症の検査を関係者に課すことだ。しかし、こうした新型コロナウイルス検査は信頼性が大きく低下する場合があるうえ、いつでもすぐに実行できるとは限らず、結果が出るまでに数日を要する。それでも次第に状況は改善するはずだ。最終的には、各組織が広範囲の従業員に対し、頻繁に検査を実施することになるだろう。

情報を収集する別の方法として症状を監視すること、とりわけ軽微で患者本人が自覚しない可能性すらあるような症状を監視することがある。一部の国々では既に、必ず検温を受けてから事務所、レストラン、空港、地下鉄に立ち入る体制が敷かれている。この方法は、役に立つが完璧ではない。なぜなら熱がある人が新型コロナウイルスに罹患しているとは限らないし、熱がなくても感染している可能性があるからだ。検温と別の診断情報を組み合わせれば、正確さが高まる可能性がある。たとえば病院での胸部X線検査や血中酸素濃度検査などの情報である。こういった形の情報収集による方法は、新型コロナウイルスの直接検査に比べると精度が劣るかもし …

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