KADOKAWA Technology Review
×
欧州ロックダウンで310万人の死亡回避、英ICLチーム試算
Queven | Pixabay
Lockdowns may have prevented more than 3 million deaths in Europe

欧州ロックダウンで310万人の死亡回避、英ICLチーム試算

欧州でのロックダウン(都市封鎖)は新型コロナウイルス感染症の死亡者数を大幅に減らす効果があったとの試算が発表された。 by Charlotte Jee2020.06.11

インペリアル・カレッジ ・ロンドンの研究チームは、欧州でのロックダウン(都市封鎖)が、新型コロナウイルス感染症による死者を310万人減らす効果があったと試算している。

人々の移動を厳しく制限し、社会的距離措置(ソーシャル ・ディスタンス)を実施したことで、感染数は81%減少。調査対象となったドイツ、フランス、英国、イタリアを含む欧州11カ国すべてにおいて、再生産数(R)が3.8から1.0未満に下がり、感染が劇的に抑制されたという。計算結果は、ネイチャー誌に掲載された論文にまとめられている。

研究チームは、11カ国の新型コロナウイルス感染症による死亡者データを組み合わせ、5月4日までの週にどのくらいの感染が発生したかを逆算。1200〜1500万人が感染し、13万人が死亡したと推定した。さらに、これらの数字を、ロックダウンなどの介入がまったくなかった場合のモデルと比較。11カ国全体で310万人の死亡が回避されたことが示された。最も多くの死亡を防いだと見られるのがフランスで、その数はおよそ69万人。実際の死者は2万3000人だった。

つまり、ロックダウンは効果があったということだ。社会的距離措置や自宅待機、友人や家族との接触を控えるなどの手段が感染を減らし、結果として大勢の命が救われたことになる。だが、欧州では新型コロナウイルスの感染者は比較的少なく、ウイルスが回復者に免疫を与えるかどうかはまだ分かっていない。このため、ロックダウンを完全に解除するのには長い時間が必要になるだろう。

(関連記事:新型コロナウイルス感染症に関する記事一覧

人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る