KADOKAWA Technology Review
×
マガジン刊行記念「Vol.1 AI Issue」を新規購読でプレゼント。
さらに割引も。
ノルウェー、接触者追跡アプリの運用を停止 プライバシー懸念
Photo by Daniel Tafjord on Unsplash
Norway halts coronavirus app over privacy concerns

ノルウェー、接触者追跡アプリの運用を停止 プライバシー懸念

新型コロナウイルスの感染率が低いノルウェーで、接触者追跡アプリの運用が停止された。プライバシー侵害の懸念があるというのがその理由だが、ノルウェー公衆衛生研究所はパンデミックはまだ終わっていないとして異議を唱えている。 by Patrick Howell O'Neill2020.06.17

ノルウェー政府は、ノルウェーデータ保護機関(Norwegian Data Protection Authority)からの批判を受け、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)接触者追跡アプリ「スミッテストップ(Smittestopp)」の運用を停止した。同機関は、国内の感染率が低いことから、アプリによるプライバシー侵害はもはや正当化されないと述べた。その結果、スミッテストップはデータの新規収集を停止、これまで収集された全データは削除され、その取り組みは事実上、無期限に一時停止されることになった。

ノルウェーの感染率はヨーロッパで最も低く安定している。しかし、現地報道によると、ノルウェー公衆衛生研究所(Norwegian Institute of Public Health:NIPH)の職員らは、スミッテストップの運用を停止する決定に異議を唱えているという。

「接触者追跡アプリの運用を停止すると、感染拡大に対する備えの重要な部分が弱まることになります。アプリの開発とテストに費やす時間がなくなるからです」。NIPHのカミラ・ストルテンベルグ所長は6月1日の声明で述べた。「進行中の感染拡大に対処する能力も低下します。パンデミックは終わっていませんし、集団免疫も、ワクチンも、効果的な治療もありません。スミッテストップがなくなれば、地域または全国で発生する可能性のある新たなアウトブレイクを防ぐ態勢が、十分に整わなくなってしまいます」(同)。

新型コロナウイルス自体が世界中で絶え間なく盛衰を続けている中、新たな接触者追跡アプリはある程度の成功を収めているが、中にはうまくいっていないものもある。ノルウェーは、グーグルとアップルが開発したプライバシー重視のテクノロジーの使用に反対したため、MITテクノロジーレビューは「コビッド・トレーシング・トラッカー(Covid Tracing Tracker)」において、データ最小化と透明性でマイナス評価を付けている。

だが、状況はヨーロッパ全体で同じというわけではない。ヨーロッパ大陸で最初にひどい打撃を受けたイタリアでは、政府の後押しで、接触者追跡アプリ「イミューニ(Immuni)」が最近リリースされた。グーグルとアップルが開発したテクノロジーを採用しているイムニは比較的肯定的な評価を受け、同アプリをダウンロードできるイタリアの国民に速やかに受け入れられた。同アプリはコビッド・トレーシング・トラッカーで、最小化と透明性も含めたすべての基準において満点を獲得している。

英国は、グーグルとアップルのテクノロジーを使用せず、独自の中央主権型テクノロジーを構築することを選択したため、苦戦を強いられている。BBCニュースによれば、政府による接触者追跡アプリは、6月または7月までにはようやく全国的にリリースされる予定だ。時間がかかり、しばしば暗礁に乗り上げた開発プロセスは、最終製品について多くの人々を混乱させ、批判的にしてしまった。

これらのアプリに対する世界的な反応により、ほとんどの国において、接触者追跡アプリが新型コロナウイルス対策として有用なのかどうかについて、深い疑いの目で見られるようになってしまった。この問題には2つの側面がある。1つは、多くの人はこの真新しいテクノロジーの有効性と正確さに疑問を感じているということだ。そして、もう1つ、おそらく、それと同じくらい重要なのは、アプリが大勢に受け入れられるかどうかということや、パンデミックを止めて人々の命を救うために一体どの程度広く普及すればいいのかが不確かであることに加えて、デジタル医療による監視について国民の不安が広がっていることだろう。

(関連記事:新型コロナウイルス感染症に関する記事一覧

人気の記事ランキング
  1. The human cost of a WeChat ban: severing a hundred million ties 中国と世界をつなぐ 「ウィーチャット禁止」の 深刻すぎる影響
  2. The AI optimization group's challenge: Innovation in infrastructure 屈指のAI最適化集団が挑む
    「インフラ」のイノベーション
  3. A college kid’s fake, AI-generated blog fooled tens of thousands. This is how he made it. 大学生がGPT-3で偽記事を作ってニュースサイトで1位になった方法
  4. It’s too late to stop QAnon with fact checks and account bans SNSで存在感増す陰謀論、 「Qアノン」とは何か?
  5. IBM has built a new drug-making lab entirely in the cloud 化学実験を在宅で、IBMがロボット+AIでクラウド新サービス
パトリック・ハウエル・オニール [Patrick Howell O'Neill]米国版 サイバーセキュリティ担当記者
国家安全保障から個人のプライバシーまでをカバーする、サイバーセキュリティ・ジャーナリスト。
10 Breakthrough Technologies 2020

気候変動から量子コンピューティング、人工衛星群まで。
MITテクノロジーレビューが選んだ、世界を変える10大テクノロジー。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. The human cost of a WeChat ban: severing a hundred million ties 中国と世界をつなぐ 「ウィーチャット禁止」の 深刻すぎる影響
  2. The AI optimization group's challenge: Innovation in infrastructure 屈指のAI最適化集団が挑む
    「インフラ」のイノベーション
  3. A college kid’s fake, AI-generated blog fooled tens of thousands. This is how he made it. 大学生がGPT-3で偽記事を作ってニュースサイトで1位になった方法
  4. It’s too late to stop QAnon with fact checks and account bans SNSで存在感増す陰謀論、 「Qアノン」とは何か?
  5. IBM has built a new drug-making lab entirely in the cloud 化学実験を在宅で、IBMがロボット+AIでクラウド新サービス
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る