ヴァージンが民間宇宙飛行士の仲介役に、支援・訓練でNASAと提携
これまで準軌道飛行を手がけてきたヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)が、国際宇宙ステーション(ISS)へ滞在する民間宇宙飛行士の訓練・支援に乗り出す。 by Neel V. Patel2020.06.23
ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)は、米国航空宇宙局(NASA)と提携し、国際宇宙ステーション(ISS)へ滞在する民間宇宙飛行士を訓練・支援する「民間軌道宇宙飛行士準備プログラム」の開発に取り組むと発表した。
NASAは2019年、観光地として、あるいはISSのリソースと微小重力環境を使ったさまざまな科学技術実験を実施することを目的として、民間企業から宇宙ステーションへのミッションの入札を受け入れると発表した。しかし、企業がどのように自社の宇宙飛行士を訓練するのか、また軌道上で有人の任務を成功させるのに不可欠となる後方業務支援とリソースをどのように提供しなければならないのかは、あまり明確になっていなかった。
ヴァージン・ギャラクティックは新たな合意の下で、民間企業や観光客、研究機関などの関係者が、短期間のミッションのためにISSに行くことを支援する、仲介者の役割を果たすことになる。サービスには、潜在顧客の特定、民間宇宙飛行士の訓練の手配、打ち上げに必要な宇宙船の調達、宇宙飛行のための地上および軌道上支援の提供などが含まれる予定だ。
なぜヴァージン・ギャラクティックなのだろうか? 同社はこれまで、宇宙空間に数分間だけ入り、無重力を体験して地球を上から見るという宇宙観光のための準軌道飛行(弾道飛行)に焦点を当ててきた。そう考えると、同社が民間軌道宇宙飛行士準備プログラムに選ばれるのは奇妙に思えるかもしれない。ヴァージン・ギャラクティックがこれまで宇宙に送ったのは、2回の試験飛行で5人だけだ。同社の「スペースシップ・ツー(SpaceShipTwo)」は空中の航空機から飛び立つ空中発射式の宇宙船で 、宇宙ステーションまで人間を連れて行く性能はない。
しかし、スペースシップ・ツーは、宇宙飛行士の訓練に使用される可能性が高い。宇宙飛行士が宇宙へ飛び立つ厳しさに備え、微小重力を体験させる。また、ヴァージン・ギャラクティックはニューメキシコ州のスペースポート・アメリカに、宇宙飛行士の訓練にも使用できる大規模な宇宙飛行施設を運営している。
実際にISSに到達するには、商業乗員輸送用の宇宙船を開発するスペースXやボーイングといった他の企業と協力する必要がある。スペースXは最近、宇宙船「クルー・ドラゴン(Crew Dragon)」で宇宙飛行士をISSに送った。ボーイングもこの秋に、カプセル型宇宙船「スターライナー(Starliner)」で無人試験をやり直した後、すぐに宇宙飛行士を送る予定だ。
民間軌道宇宙飛行士準備プログラムの仕組みがどのようなものになるのか、費用はいくらなのか、宇宙飛行士の訓練と打ち上げのための暫定的なスケジュールはどうなるのかなど、具体的な詳細はまだ不明だ。そうした中で、NASAのジム・ブリデンステイン長官は6月19日、宇宙飛行士を商用の準軌道用宇宙船で飛行させる新しい計画の存在について発表した。この計画ならヴァージン・ギャラクティックが得意とするところだ。同社の民間軌道宇宙飛行士準備プログラムが、この準軌道プログラムに何らかの形で関連しているかどうかはまだ不明だが、詳細は近々明らかにされることになっている。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。