気候変動で強まる熱波、世紀末に死者数百万人増加も
気候影響研究所の新たな研究によると、2100年頃には、熱波による死者は10万人当たり73人増加するという。地球温暖化のより楽観的なシナリオに基づく場合でも、死者が年間数百万人増加する可能性がある。 by James Temple2020.08.06
猛烈な熱波によりイラクから米国南西部まで、今年は世界中で最高気温の記録が破られている。気候変動が加速するにつれ、状況は悪化するばかりだ。
新たな研究によれば、今世紀の終わりごろには、極度の暑さ続きにより、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)やマラリア、黄熱病などすべての感染症による死者数にほぼ匹敵する死者を出す可能性がある。
米国のいくつかの大学の気候に関する経済学者および研究者のグループで組織する気候影響研究所(Climate Impact Lab)の研究によれば、世界の国々が高レベルの温室効果ガスを排出し続ける「RCP8.5」と呼ばれるシナリオに従った場合、2100年頃には熱波による死者が10万人当たり73人増加するという。
その結果として、バングラディシュ、パキスタン、スーダンなど特に暑く、貧しい地域のいくつかの国では、熱波による死亡率は10万人当たり200人に到達、あるいはそれを超過する可能性がある。
一方で、そのような極端なシナリオはよく使用されているが、世界の温暖化ガス排出量が横ばい状態にある中で、あまりにも悲観的過ぎると主張する気候研究者も増えている。温室効果ガスによる汚染は2040年頃に頂点に達し、それ以後は減少し始めるという、より楽観的なシナリオでは、10万人当たりの死者数の増加は11人に減るという。それでも、その時点の人口によるが、ほぼ何百万人も死者が増えることになる。
死者が10万人当たり73人増加するという予測は、歴史的なパターンに基づき、富裕な国々がエアコンや都市の冷却センターなど、気候変動への適応策に注ぎ込むと思われる投資を考慮している。そのような余裕がある国では、適応策にコストをかけることで死亡率を29%減少させ、国内総生産(GDP)への打撃を緩和できる。しかし、すでに悪化する熱波に不平等に苦しんでいる多くの貧しい猛暑下の国々にそんな余裕はないだろう。
今回の研究では、多数の国の気温記録と死亡率データの歴史的な関係を分析し、地域的な気候予想を重視して将来の死者数を予測して結論を引き出した。
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- ジェームス・テンプル [James Temple]米国版 エネルギー担当上級編集者
- MITテクノロジーレビュー[米国版]のエネルギー担当上級編集者です。特に再生可能エネルギーと気候変動に対処するテクノロジーの取材に取り組んでいます。前職ではバージ(The Verge)の上級ディレクターを務めており、それ以前はリコード(Recode)の編集長代理、サンフランシスコ・クロニクル紙のコラムニストでした。エネルギーや気候変動の記事を書いていないときは、よく犬の散歩かカリフォルニアの景色をビデオ撮影しています。